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はじめに
自動車の自動運転で、新たな動きが出ている。自動運転は、かつてはSF小説のなかで「夢のクルマ」として描かれる空想のものに過ぎなかった。
1980年代には、専用の道路の上を走行する車種の開発が開始された。2000年代に入ると、市街地を模したコースで走行実験が繰り返された。2010年代には、自動運転機能を搭載した自動車が開発され、自動運転での無人自動運転移動サービスや、高速道路走行を通じた物流サービスなど、さまざまな実証実験が行われている。
そして、2021年3月には、量産車としては世界初となる、「レベル3」の自動運転機能を搭載した自動車が国内で発売された※。
※ ホンダ社が、「レベル3」の自動運転機能を搭載した自動車(新型「レジェンド」)を、リース販売のみの100台限定で発売。
自動運転には、交通事故の低減をはじめ、交通渋滞の緩和・解消、高齢者の移動手段の確保、ドライバーの人材不足の補完、環境負荷の低下など、さまざまな効用が期待されている。
自動運転技術の進歩にあわせて、自動車保険についても、対応に向けた検討や取り組みが進められてきた。本稿では、欧米での議論を含めて、自動運転に対する保険について簡単に紹介していく。
自動運転の技術開発動向
自動車保険の話に入る前に、まずは自動運転について、現状を振り返っておくこととしよう。
自動運転は、5段階にレベル分けされている
ひとくちに自動運転と言っても、その内容には大きな幅がある。システムが操舵や制動といった運転操作の一部を代行する初期段階のものから、全ての運転操作をシステムが行って運転者が不要となる最終段階のものまで、自動運転にはいくつかのレベルがある。
運転者が全ての運転操作(運転タスク)を行う状態は、レベル0となる。その上で、自動運転は、つぎの表のとおり、5段階にレベル分けされている。現在は、レベル3の量産車が限定的に発売されたところだ。今後は、レベル4や、レベル5の運転自動化が進んでいくものと期待されている。
自動運転の技術開発は、関連分野が広い範囲に渡っている
自動運転システムは、自動車の新機能開発の一種といえる。しかし、メーカーが自社系列内で開発を完了できるわけではない。自動車の技術のみならず、センサーやレコーダー(ドライブ・レコーダー(DR)、イベント・データ・レコーダー(EDR))など、幅広い技術が開発に必要となるためだ。そのため、自社開発とあわせて、企業間での共同開発や、技術を持つ企業のM&Aなどが繰り広げられている。
損害賠償責任から製造物責任へとシフト
運転に伴う責任も変化していく。自動運転のレベルが向上していけば、運転者の運転タスクは減り、損害賠償責任の範囲は縮小される。これに代わって、自動運転システムの機器・ソフトの不備による事故が増える。つまり、メーカー等の製造者の責任が問われることが一般的になるとみられる。