本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月7日に公開したレポートを転載したものです。
資産形成に向かない株式のレバレッジ型~2021年11月の投信動向~ (写真はイメージです/PIXTA)

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ファンド全体で1兆円超えの純流入

2021年11月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、11月は外国株式に7,900億円の資金流入があり、ファンド全体でも1兆400億円の資金流入となった【図表1】。10月の6,600億円の資金流入から大幅な増加となり、1兆円超えたのは2015年6月以来のことである。

 

外国株式への7,900億円の資金流入は、10月の4,300億円から大きく増加した。タイプ別には、アクティブ・ファンドの流入金額が10月の2,400億円から11月の4,900億円へと倍増し、インデックス・ファンドの流入金額も10月の1,900億円から11月の3,000億円に急増した。

 

外国株式インデックス・ファンドの1カ月あたりの流入金額はこれまで2021年6月の2,300億円が最大であったが、11月はそれを700億円も上回った。

 

[図表1]2021年11月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
[図表1]2021年11月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

米国株式に対して楽観視しすぎてないか

外国株式のインデックス・ファンドを牽引しているのは、いわゆる米国株式物である。米国株式のインデックス・ファンド(黄棒)には11月に1,800億円の資金流入があり、10月の1000億円から大きく増加した【図表2】。

 

外国株式インデックス全体の増加分900億円のうち、実に800億円が米国株式物の増加であった。資金流入が大きかったファンドをみても、上位10本中3本(赤太字)が超低コストの米国株式のインデックス・ファンドであった【図表3】。

 

もしかすると、年末に向けて一般NISAやつみたてNISAの枠を使い切ろうと買いました投資家が多かったのかもしれない。

 

このように米国株式をはじめ、外国株式のインデックス・ファンドが個人投資家に浸透してきていることは喜ばしいことである。ただ、米国株式に限らず地域分散させている外国(先進国)もしくは全世界株式のインデックス・ファンドでも価格変動が大きい、いわゆるリスクが高い商品である。

 

米国株式は2020年4月以降ほぼ右肩上がりで上昇してきたこともあり、リスクを軽視して米国株式インデックス・ファンドを購入している投資家が増えていないか、やや心配である。

 

米国株式はこれまでは好調であったが、今後は米金融政策の動向さらには新型コロナウイルスの新たな変異株の出現によって、大きく崩れる可能性もある。

 

筆者の経験上、どんなに長期投資を心がけていても、含み損を抱えた状況は精神衛生上好ましくなく、できれば避けたいものである。やはり高値掴みにならぬよう、時間分散して投資することが良いと思われる。

 

[図表2]米国株式のインデックス・ファンドの資金流入出
[図表2]米国株式のインデックス・ファンドの資金流入出

 

[図表3]2021年11月の推計純流入ランキング
[図表3]2021年11月の推計純流入ランキング

 

米国株式の主要株価指数のサブプライム、リーマン・ショック時の最大下落率(ドローダウン)をみると、どの株価指数(現地通貨・ドル建て:黄棒)も2007年から2009年にかけて50%以上下落している【図表4】。

 

さらにその時期に円高も進行したため、為替ヘッジをしていなければ円建てでは、ほぼ日経平均株価と同じ程度の60%以上の下落であった。

 

米国株式に限った話ではないが株式(ファンド)への投資額は、少なくとも一時的に元本が半分になっても心穏やかにいられる金額に留めることをおすすめしたい。長期投資を継続するためには、ご自身のリスク許容度の範囲内で、過度のリスクを取り過ぎないように心がけることが何よりも重要である。

 

[図表4]米国株式指数のサブプライム、リーマン・ショック時の最大下落率
[図表4]米国株式指数のサブプライム、リーマン・ショック時の最大下落率