本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開した保険会社経営に関するレポートを転載したものです。
自動運転と保険の進化…レベル3以降の自動運転をどう補償するか? (写真はイメージです/PIXTA)

自動運転の進化に伴う保険の変化

つぎに、自動運転の進化が、自動車保険をどう変えていくか、みてみよう。対人事故、対物事故の損害賠償責任が中心の自動車保険は、今後、どう変わるだろうか。

 

自動運転により、運転者の過失による事故は激減

 

現在、自動車保険は、運転者の過失責任を担保することが中心とされている。しかし、将来自動運転のレベルが進み、その機能を装備した自動車が普及すると、運転者の過失による事故は激減すると考えられる。完全自動運転が実現すれば、運転者という概念そのものがなくなるとみられる。

 

製造物責任、サイバーセキュリティ、インフラ保険の開発が進む

 

自動運転技術の進展・普及に伴い、従来の補償範囲に対する保険料収入は、大きく低下するとみられる。今後、損保会社は、新たな保障ニーズに対応する保険商品を開発することが求められる。2050年頃までに開発が進むとみられる保険分野として、 次の3つが挙げられる。

 

(1) 製造物責任保険自動運転システムでは、集積回路や各種のセンサー等が用いられる。アルゴリズムの欠陥、メモリーのあふれ、ソフトのバグなどが原因で、自動運転機能が誤動作を起こし、その結果、交通事故が発生した場合、メーカーは大きな賠償責任を問われかねない。

 

(2) サイバーセキュリティ保険自動車が装備する、IT関連の機器やソフトは、外部とのデータ通信を前提としている。そのため、その通信に伴う、サイバーセキュリティの問題が顕著になる。たとえば、外部からのハッキングや、ランサムウェアなどのマルウェアによって、自動運転が誤動作や機能停止を起こせば、交通事故や非効率な運転といった事態につながる恐れがある

※ 2021年3月に、パナソニック社は、サイバーセキュリティ会社である米マカフィーと組んで、自動車へのサイバー攻撃を監視する「車両セキュリティ監視センター」の構築を開始すると発表した。

 

(3) インフラ保険今後は、自動車のみならず、自動運転車を制御する交通インフラやセーフガードなどについても、補償ニーズが高まるものと考えられる。これまで、公共インフラの補償は、政府や自治体が自家保険の形態で対応することが一般的であった。だが、今後は、再保険の仕組み等を通じて、民間保険会社にも引き受けの機会が出てくることが考えられる。