「ゼネコン」とは、元請負者として各種の土木・建築工事を一式で発注者から直接請負い、工事全体のとりまとめを行う建設業者を指します。本記事では、株式会社白川工芸社・代表取締役の中根義将氏が、ゼネコンマンの働き方について紹介していきます。
元ゼネコンのデキる現場監督が実践する「トラブル回避策」 (※写真はイメージです/PIXTA)

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デキるゼネコンマンが実践するコミュニケーション方法

職人とのコミュニケーション力が高いスマートゼネコンマンを注意して見ていると、共通して聞き上手であることがわかる。

 

コミュニケーションに関するノウハウ本はたくさんあるけど、そのほとんどに「傾聴」という言葉も出てくる。やはりこちらが話すよりも、相手の話を「聞く」というのがコミュニケーション力アップに欠かせないのだろう。

 

職人は不器用な人や、シャイな人も多いので、最初は怖いと感じるかもしれない。でも、そういう職人に限って教えたがりだったりするもので、強面の職人さんなのに話してみるととても丁寧に教えてくれるなんてことが建設現場にはよくあるのだ。

 

ただ聞いているだけでも、やたらと自分の主張ばかり話す人に比べればマシだろうけども、職人が心を開いてくれるほどにコミュニケーションを深めるには、ただ聞くだけではなくて「傾聴」のスキルはあった方がいい。

「ちゃんと聞いてくれているんだ」という安心感が重要

僕が実践していたのは、①ペーシング、②オウム返し、③パラフレーズ。この3つの傾聴スキルだ。

 

まず、①ペーシングは、相手のペースに同調すること。話し方、姿勢、テンションなど、相手がハイテンションで話しているならこちらもテンション高く聞いてあげた方が相手だって気分よく話しやすい。逆も然りで、深刻な話をハイテンションで聞いたら絶対に怒られるだろう。まずは精神的なペースを合わせることで、相手から話しやすいと思われる空気を作るのがペーシングだ。

 

そして②オウム返しは、相手の言葉を、そっくりそのまま返すことだ。よく漫画などで、相手と同じ技を返す必殺技とかにも使われたりする。いわゆる「復唱」のことだ。例えば職人から電話がかかってきて、「5階の壁の施工順序ってどうなるの?」と言われたとする。いきなり答えから話したくなる気持ちを抑えて、「5階の壁の施工順序は」というオウム返しを入れた上で答えを話すのだ。

 

こうすることで、相手側は「ちゃんと聞いてくれているんだ」という安心感が更に高まる。話を聞いてもらえることがわかると、話す方も気分がよくなるので、色んなことを話してくれるようになる(※せっかちな職人の場合は、同じこと2回も言わなくてもわかってるだろ! とか怒られたこともある)。

「急ぎでやってほしいんだけど」への正しい返答は?

最後に、③パラフレーズだ。言葉は難しいもので、人によって定義の違い、感覚の違いがあって、同じ言葉を伝えても認識の程度が変わってくるのが普通だと思う。この認識のズレをなくすために、パラフレーズ=言い換えが有効なのだ。

 

「ということは」という言い方が一番使いやすい。例えば、「これ、急ぎでやってほしいんだけど」なんて依頼はままあるけど、話す側の思っている「急ぎ」と聞き手の「急ぎ」に違いがあったためにトラブルになることは想像しやすい。

 

急ぎなんだから、1時間以内に対応してほしかったのに。と思う一方、急ぎっていうから今日中にやっとけばいいのかと思っていました。という風な具合である。

 

こういったトラブルはパラフレーズを使うことでほとんど解消できる。同じ例でいくと、「これ、急ぎでやってほしいんだけど」と言われたら、「急ぎですね。ということは、〇時までにやれば大丈夫ですかね?」というやり取りがオウム返しからパラフレーズの流れだ。ここで認識の違いがあれば、「いや、△時までにやってほしいんだよ」と、より具体的に相手の求めていることがわかってくるのだ。

 

この傾聴の3スキルを自然に使えるようになれば、職人とのコミュニケーションは飛躍的によくなるはずだ。

 

更に短期間にコミュニケーションを高めたい場合は、ここに④褒める、というスキルも入れてみて欲しい。もちろん、相手のペースに合わせないといけないが、褒めてもらって嫌がる人はあまりいない。褒めることで機嫌がよくなり、何でも話してくれるようになるはずだ。

 

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中根 義将
福井大学卒業。新卒入社した株式会社大林組にて、2011年に発生した東日本大震災の復旧工事を中心に、7年間にわたり現場監督として活躍。

 

復興活動に携わる中で、地元・神戸市に恩返しをするのが使命と悟り、2015年に祖父の代から続く株式会社白川工芸社へ。2017年、同社代表取締役就任。大林組時代に培ったマネジメント力をもとに「人を活かした経営」、「建設業界の働き方改革」に取り組み、それまで三期連続赤字、債務超過であった同社を1年で黒字化。2年目には債務超過も解消し、V字回復を果たす。

 

現在も「地域に愛される次世代の塗装店」を目指し、幅広い活動に取り組んでいる。 著書に『スマートゼネコンマン』(幻冬舎ルネサンス新社)、『ペンキ屋の若旦那が教える仕事の流儀』(kindle)がある。