(※写真はイメージです/PIXTA)

売手数料の高さから、銀行などが積極的に勧誘している「外貨建て保険」。商品性が難解なこともあり、契約後トラブルに発展するケースも少なくありません。今回紹介する70代後半の伊藤俊子さん(仮名)もその1人です。高齢者を中心とした外貨建て保険のトラブルが取りざたされる一方で、契約が途絶えない理由とは。朝日新聞経済部でかんぽ生命の不正販売問題も担当した柴田秀並氏が、「銀行だから大丈夫」という世間のイメージを悪用した、銀行の呆れた実態を暴きます。※本記事は、柴田秀並氏の著書『生命保険の不都合な真実』から一部抜粋・再編集したものです。

保険会社から一通の書面が…

だが2018年11月、この生命保険会社が社内に設置する「お客様相談室」から、一通の書面を受け取った。内容はおおむね次のようなものだ。

 

【お申し出内容】
・為替リスクに対し説明がなかった。
・外貨送金で発生する手数料だけでなく、すべての手数料に対し説明がなかった。
・生命保険であることの認識がなく、信託銀行で取り扱いしている商品と思っていた。
【ご要望事項】
・契約を取り消し、保険料を返金してほしい。

 

一方で銀行側の主張も明記されており、長女側と真っ向から対立している。

 

銀行側は販売時の説明が適切だったとする証拠に、「ご意向把握アンケート」や「意向確認書兼適合性確認書」(以下確認書)を挙げる。この確認書は、保険商品の申し込みにあたっての留意点を記し、いくつかの質問に答えさせるチェックシートのようなものだ。

 

そこには「家族の同席が必要か」「申し込み前に検討する時間が必要か」といった項目が記されており、伊藤さんはいずれも「必要ない」としていた。また、「申し込み前に注意喚起情報を確認したか」という項目には「確認した」にチェックをしていた。

 

銀行側は、こうしたチェックや署名が確認書にあることを強調した。さらに行員への聞き取りなどによって、商品の説明に関しても、「わかりづらい内容の箇所は数回にわたり説明した」と主張した。

 

回答書にはこうした銀行側の主張が明記されたうえで、最後には、生命保険会社側から「弊社見解」が述べられている。

 

所要の事実確認からは伊藤様の【お申出内容】を裏付けるような客観的な事実は認められませんでした。募集人が当該保険募集において、不適切な取扱を行った事実を確認することもできませんでした。
なお、いただきました手書きの資料、および電話の録音については、当該契約の有効性には影響を与えるものではありませんでしたことも申し添えさせていただきます。

 

長女は「(母は)行員に言われるがまま、書面にチェック印を書いただけ。細かく内容を読むわけがない」とも訴えた。だが生保側が強調したのは、伊藤さんが「わかっていないとする客観的な根拠がない」というものだった。確認書への形式的なサインなどがあるかぎり売る側の推定無罪で、それを突き崩す根拠がないというものだ。

次ページ銀行側の回答と矛盾する「音声データ」

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