AIに取って代わられない人間の育成を目的として、日本の教育は変化のさなかにあります。高校では2020年から「古典研究」「理数研究」と「探求」のついた科目が新設されました。この改革のさきがけとなったのが大学入試です。数年前までとはガラッと変わった「大学や将来で求められる力」について、教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
早稲田大学「AO・推薦入学者」を“全体の6割”へ…今、教育界に起きている「変化」 (※写真はイメージです/PIXTA)

早稲田大学はAO・推薦入学者を“全体の6割”へ引き上げ

OECD(経済協力開発機構)が2030年のあるべき学びの姿を示した「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)」というものがあります。これには何のために学ぶのかという目的が示されています。それが、なんと「ウェルビーイング」なのです。

 

「ウェルビーイング」というのは、身体的・精神的・社会的に健全な状態を示している言葉で、「幸せ」と言い換えてもいいでしょう。この羅針盤では、自分が幸せに生きるために学ぶと同時に、環境問題、貧困や格差、戦争など、地球上のあらゆる課題を解決できる力を身に付けていくために、学ぶのだといっているのです。

 

探究型学習へのシフトは世界的な潮流で、世界的な学力調査として有名なPISA調査で1位、2位を争っている上海やシンガポールの学校でも、日本以上に積極的に探究的な学習を取り入れていることからも、「探究」が21世紀の学校教育の中心になることは間違いないでしょう。

大学入試も、「やりたいこと重視」に変わるワケ

大学入試も、センター試験の廃止だけではなく、学びへの意欲を見るようになってきていることを知っていますか?

 

推薦入試(2021年度からは学校推薦型選抜)やAO入試(2021年度からは総合型選抜に名称変更)の割合が増えていて、2018年度は、国公立大学と私立大学の入学者のうち45.2%となっています。

 

私立大では10年ほど前からAO・推薦入学者が半数以上を占めているのですが、今後これをもっと増やそうとしています。

 

たとえば、早稲田大学では、今後、募集定員全体に占める割合を一般入試と逆転させて、6割まで引き上げる目標を掲げています。6割ってすごくないですか。

 

国立大学では、2021年度までに、推薦入試AO入試の割合を、入学定員の3割を目標にすると決めています。なぜそうなっているのでしょう。

 

一番の理由は、多様な学生を集めたいということです。

 

今、大学は、グローバル化に対応できる人材を育成することと、世界に引けを取らない研究拠点として新たな価値を創造することが求められています。

 

あらゆるところで多様性が求められるようになってきている今、ペーパーテストという一つのものさしだけでは、一面的な能力しか測れず、学生の質も画一的になってしまいます。だから、「多面的・総合的な評価」が重んじられるようになってきているのです。