AIに取って代わられない人間の育成を目的として、日本の教育は変化のさなかにあります。高校では2020年から「古典研究」「理数研究」と「探求」のついた科目が新設されました。この改革のさきがけとなったのが大学入試です。数年前までとはガラッと変わった「大学や将来で求められる力」について、教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
早稲田大学「AO・推薦入学者」を“全体の6割”へ…今、教育界に起きている「変化」 (※写真はイメージです/PIXTA)

推薦・AOは一般入試より楽…?大学側が重視すること

しかも、偏差値で序列化される入試では、いかに難易度の高い大学に入るかということが目的になりがちでした。何のために大学に行くのか、自分は何をしたいのかを深く考えないまま受験をした結果、せっかく難関大学に合格したのに、やる気をなくし、ドロップアウトしてしまう学生のことが、以前から問題になっています。

 

そこで、学生の多様な資質を見極めるためにも、ミスマッチをなくすためにも、大学のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)に合う学生を集められる推薦入試・AO入試の枠を増やそうとしているのです。

 

推薦入試やAO入試というと、一般入試より楽に合格できるというイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。

 

学力は、共通テストで測り、書類審査を通過したら、小論文と面接やプレゼンテーション、グループディスカッションなどが行われるところが大半です。東大・京大も推薦入試を実施していますが、京都大学が実施している「特色入試」は、「意欲、買います」というキャッチコピーの通り、学びへの意欲を重視しています。

 

入学後に大学が定めたカリキュラムについていける学力も必要ですが、それ以外に高等学校での活動内容についてまとめた「学びの報告書」や、京大で何を学びたいのか、卒業後、何をしたいのかといった、「学びの設計書」を提出しなければなりません。

 

「何が好きで、何がしたくて、何ができるか」ということと、大学で「何をしたいのか」を、きちんと言葉にして論じられる力があります。そういう子は意欲が旺盛で学ぶ力も強いので、入学後は、それぞれの「やりたい!」ことに邁進(まいしん)していくのです。

 

今後は、入試でも偏差値的な学力より、「物事に主体的に取り組んでいく意欲」や「学んだことを人生や社会に生かそうとする姿勢」が重要視されていくでしょう。

 

日頃から自分の好きなことや興味のあることに意欲的に取り組んできた結果が評価されるので、学校から与えられる勉強は苦手でも、自分のやりたいことに一生懸命取り組んできた子どもにとっては、またとないチャンスになります。