学力という一つのものさしで優劣が測られる教育は、過去のものになりつつあります。それぞれが得意なことを活かし「自分で考えて行動する」力を求める動きは、コロナ禍を経て更に加速しました。「正解のない時代」に必要なものはなにか? 教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
終身雇用は崩壊…「やりたいことなどない大人」の辛すぎる今後 (※写真はイメージです/PIXTA)

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「有名大学からいい会社に就職」信仰は過去のものに

世界的ベストセラーになっている『IKIGAI』(エクトル・ガルシア、フランセスク・ミラージェス著、ペンギン・ランダムハウス)という本を知っていますか?

 

日本語の生きがいが、そのまま世界で通用する単語になっているのですが、この本では、「自分が好きなこと。得意なこと。社会のニーズがあること。そして、報酬が得られること」その4つが重なるところを生きがいと定義しています。私は、子どもたちには、ぜひこの「IKIGAI」を見つけてほしいと思っています。

 

これまでは、なんだかんだいっても「有名大学に入り、いい会社といわれる大企業に就職することが安定した人生と成功への道」といった考え方が王道として信じられてきたフシがあります。

 

なぜなら、今、子育てをしている親世代が育ったのは、世間的によいといわれるレールに乗っていればある程度安心という「正解がある時代」だったからです。

 

でも「終身雇用」や「年功序列」という制度が崩れ、たとえいい会社といわれる大企業に入れたとしても、それで一生が保証されるわけではありません。

 

しかも、新型コロナウイルス感染症の出現によって、人々の生活は一変。将来を見通すことが一層難しい、正解のない時代になったことをみんな実感したはずです。

 

もちろん、よい変化もあり、「どこに住んでも仕事ができるし、いくつ仕事を持ってもいい」ということがニューノーマルになりつつあります。それによって、仕事のやり方も変わり、時間の自由を手に入れ、ハッピーになったという声も聞こえてきます。

 

自分がワクワクして取り組めること、本当にやりたいことがある人にとっては、可能性にあふれた時代になってきました

 

しかし、「自分の好きなこと、やりたいことはこれ」とわかっていて、毎日をワクワクしながら暮らしている大人はどのくらいいるでしょうか。周りを見回しても、あまり見当たらないように感じます。

 

それどころか、急に「自由にしていいよ、やりたいことをやりなさい」「あなたはどう考えるの?」と言われて、「えっ? そんなこと言われても……」と困っている人が多いようです。

 

それは、これまで、新しいことに挑戦しようとしたときに、親や先生から否定されたり、人と違う意見を言ったら白い目で見られたりという経験を繰り返した結果、自分の考えを持たないほうが生きやすいということを学習してきてしまったからかもしれません。