新卒時に職に就けなかった人、不本意ながら非正規雇用に就いた人が多い就職氷河期世代。同世代より若い世代も不遇を味わってはいるが、アベノミクス始動後には賃金が上昇した。一方、就職氷河期世代の賃金は対照的に減少。それはなぜか…。そして、なかには働くことをあきらめる人も…。 日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏が解説していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
非正規だけでなくニートも…氷河期世代の生活が「今なお厳しい」ワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「非労働力人口」が占める割合も氷河期世代で高い

厚生労働省は、ニートの定義の一つとして、非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者としている。非労働力人口とは、15歳以上人口のうち、労働市場から退出し、就業者にも完全失業者にも含まれない人をいう。

 

仕事をしていないという点では、完全失業者と同じである。しかし、完全失業者は、仕事があればすぐに就くことができ、そもそも、仕事を探す活動をしているという点で非労働力人口とは異なる。

 

では、実際に、総務省「労働力調査」から、15歳以上人口のうち非労働力人口が占める割合(非労働力人口比率)をみてみよう。非正規雇用比率と同様に、就職氷河期世代が上の世代と比べて高い傾向にあることがみてとれる([図表2])。

 

[図表2]非労働力人口比率(男性)

 

ライフステージの変化の影響を相対的に受けにくい男性についてみると、例えば、40代前半においては、非労働力人口比率が、団塊ジュニア世代は3.8%、ポスト団塊ジュニア世代(前期)も3.8%と、上の世代と比べて、1%ポイント前後高い。

 

また、団塊ジュニア世代の40代後半も4.5%と、上の世代より1〜2%ポイント程度高く、同様の傾向が続いている。

 

女性と比べて男性が専業主夫であるケースはまだ少ないことや、この年齢階級において、学生として活動する人も多くないことを踏まえれば、何歳を対象とするかという議論は残るが、これらは、ニートに近い概念での世代間での比較とみることができるといえよう。

 

 

下田 裕介

株式会社日本総合研究所 調査部 主任研究員