購入後4年間と5年目以降で変わる税額
米国不動産投資のタックスメリットを知るためのケーススタディーとして、以下の条件を設定して考えて見ます。
・米国の中古物件(木造)を購入
・投資時の為替レートは1ドル=120円
・物件価格10万ドル
(建物価値8万ドル、土地価値2万ドル)
・築年数25年
・賃料収入は年間8000ドル(グロス利回り8%)
・諸経費は年間3000ドル(ネット利回り5%)
・10年間保有し、10万ドルで売却
・減価償却はアメリカで27.5年、日本は4年
・所得税率は日米ともに30%
まず、不動産保有時の税額のうち、米国サイドは次のようになります。
8万ドル(建物価値)÷27.5年(耐用年数)=2900ドル(1年あたり減価償却費)
8000ドル-2900ドル-3000ドル=2100ドル
2100ドル×0.3(税率)=630ドル
日本円(1ドル=120円)換算すると・・・630ドル=7万5600円 ①
次に、日本サイドにおける不動産保有時の税額を見ていきます。減価償却は4年ですので、「4年目まで」と「5年目以降」の2パターンに分かれます。
<4年目まで>
960万円(建物価値)÷4年(耐用年数)=240万円(1年あたり減価償却費)
96万円(不動産収入)-240万円-36万円(諸経費)
=▲180万円(課税対象額)→所得税はゼロ
さらに▲180万円は、給与所得から差し引くことができます。
<5年目以降>
96万円(建物価値)-0円(減価償却費。償却済みのため0円)-36万円(諸経費)
=60万円(課税対象額)
60万円×0.3(税率)=18万円 ②
外国税額控除を適用(②-①)すると、5年目以降は10万4400円の所得税がかかります。
長期譲渡所得に該当すれば税率はダウン
今度は不動産売却時の税額です。こちらも米国サイドと日本サイドでそれぞれ計算します。まずは米国サイドです。
<簿価の計算>
2900ドル(1年あたり減価償却費)×10年=2万9000ドル(減価償却費の合計)
8万ドル(建物購入価格)-2万9000ドル=5万1000ドル
5万1000ドル+2万ドル(土地簿価)=7万1000ドル(簿価)
<キャピタルゲイン税>
10万ドル-7万1000ドル=2万9000ドル
2万9000ドル×0.225(税率)=6525ドル
日本円(1ドル=120円)換算すると・・・6525ドル=78万3000円 ①
次に日本サイドです。
<簿価の計算>
0円(建物簿価。償却済みのため0円)+240円(土地簿価)=240万円(簿価)
<譲渡所得税>
1200万円(10万ドル)-240万円=960万円
960万円×0.2(税率※)=192万円 ②
※10年保有(5年超)のため、長期譲渡所得になる。
外国税額控除を適用(②-①)すると、113万7000円の譲渡所得税がかかります。
以上を見るとわかるとおり、不動産保有時・日本サイド・4年目までの課税関係がやはりポイントで、大きな償却メリットが得られます。もちろん、これはシミュレーションのひとつですから、実際の申告等にあたっては、日本と米国現地の専門家にしっかりとご相談ください。