2020年の非正規雇用は10年前の2.5倍となりました。雇用問題から派生する中高年のひきこもりという深刻な問題は、もはや他人事ではありません。ここでは、「中高年ひきこもり」と「雇用問題」の関係について、臨床心理士の桝田智彦氏が解説していきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「最低賃金が時給1500円になったら何をしたいですか?」…衝撃の答え ※画像はイメージです/PIXTA

雇用と、「友人と距離」「孤独」との関係

非正規社員の激増は、日本をかつての「一億総中流社会」から格差社会へと変え、多くの貧しい人たちを生みだしました。この格差社会と貧困層の増大もまた、人々がひきこもることの非常に大きな要因だと考えています。

 

お金がなくて生活が苦しくなると、多くの場合、仲がよかった友人とも距離をおくようになり、孤立していきます。孤独になるなかで、自己肯定感は摩滅(まめつ)していき、自信を失い、ポジティブなことは1つもないように感じて、人生に希望を見いだせなくなっていくのです。

 

このような状態に陥ると、他人との情緒的な接触が大きな負担に感じられて、人間関係を避けているうちにひきこもっていくわけです。また、いったんひきこもってしまうと、孤独のなかで孤立していき、支えてくれる人もいないまま、多くの人たちが20年、30年と長期間ひきこもり続けることにもなります。

 

これまで私どもは約20年間、ひきこもり支援の現場に立ち、さまざまなご家庭の方々とお会いしてきました。多くの方とお話しすればするほど、雇用の問題とひきこもりの問題が密接に関係していることを強く感じるようになっています。

 

 

桝田 智彦

臨床心理士