アベノミクスで「雇用拡大」というが…その内実は
「失われた20年」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。日本は、バブル崩壊から20年以上たった今日もいまだ不況から抜けだせずにいます。
令和元年には、かの豊田自動車の社長までが「終身雇用を守るのはむずかしい局面に入ってきた」と、終身雇用の限界について言及しています。終身雇用制で守られる時代は終わりを告げ、長く勤めた人でも、表現はよくありませんが、簡単に「切り捨てられる」世の中になってきたのです。
非正規社員の激増終身雇用制の終焉によって、定年まで安心して働きつづけられるという雇用環境が失われただけではなく、同時に、非正規社員の激増という、新たな雇用形態をもたらされました。
契約社員や派遣社員など期間を定めた契約形態で働く人たちと、パートやアルバイトなどの短い期間で働く人たちを、正社員に対して非正規社員と言います。非正規社員なら、企業側の都合で辞めさせることも容易ですし、なによりも、賃金を正社員よりも低く抑えられることが企業としてのメリットでしょう。
では、非正規という雇用形態がどのような過程で生まれたのか、また、暮らし向きにおいて正規社員の人たちとはどの程度の差があるのかなど、その実態を見ておきましょう。
日本が長期不況に突入したのと同じ年、1997年に政府は「労働者派遣法」を改正するなどして、企業が契約社員や派遣社員などの非正規社員の雇用を可能とする道筋をつけました。
さらに、第二次安倍政権が誕生後のアベノミクスでは雇用の拡大を推し進めましたが、ここで増えたのが非正規社員です。アベノミクスで雇用は増えたものの、その内実は、非正規社員の増加であり、それに対して、正社員の割合は減っているのです。
1997年以降、アベノミクスも含めて今日にいたるまで、非正規社員の占める割合は年々拡大してきました。
2018年、総務省の「労働力調査」によると、役員をのぞく全雇用者数5596万人のうち、正規職員・従業員が3476万人に対して、非正規職員・従業員が2120万人でした。非正規で働く人が全体の約37%、4割に迫る勢いです。