2020年の非正規雇用は10年前の2.5倍となりました。雇用問題から派生する中高年のひきこもりという深刻な問題は、もはや他人事ではありません。ここでは、「中高年ひきこもり」と「雇用問題」の関係について、臨床心理士の桝田智彦氏が解説していきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「最低賃金が時給1500円になったら何をしたいですか?」…衝撃の答え ※画像はイメージです/PIXTA

「最低賃金時給1500円が実現したら?」衝撃の答え

しかも、収入の格差は歴然としています。フルタイムで働いている非正規の平均賃金は正社員の65%にとどまっているのです(厚労省の『「非正規雇用」の現状と課題』より)。

 

同じように働いても非正規というだけで、正社員の7割にも満たない収入しか手にできないわけです。しかも、正社員では多くの場合、年齢とともに賃金が上がっていくのに対して、非正規ではほとんどが上がりません。

 

このような不公平がまかりとおっている格差社会の日本で広がっているのは、正真正銘の貧困問題です。

 

ある調査では、この国に暮らす全体の56.55%の人が「生活が苦しい」と答えていますし、さらに、子どもの7人に1人が貧困、単身女性の3人に1人が貧困に陥っています。

 

また、東京都のインターネットカフェ・漫画喫茶等のオールナイト利用者(946名)を対象とした調査では、オールナイト利用者の男性割合が85.9%。その内で住居を喪失しているのが97.5%、その内、住居喪失不安定就労者97.8%(女性割合は14.1%、住居喪失者2.5%、住居喪失不安定就労者2.2%)であり、年齢は30〜39歳が29.3%、ついで20〜29歳が27.8%、40〜49歳が18.7%、50〜59歳が17.3%、60歳以上が4.9%という衝撃的な結果もあります。

 

住む場所がなく、漫画喫茶に寝泊まりしている人が全世代にいるのです。もはや、日本が「総中流社会」だと言うのにはあまりにも無理があることが、おわかりいただけると思います。

 

さらに、次のようなデータもあります──。

 

貧困や格差をなくそうと活動している「エキタス」という市民団体が、若者にインターネットで「最低賃金、時給1500円が実現したら、何をしたいですか?」と問いかけたところ、「病院へ行きたい」と答えた人が最多で、約3割にもおよんだそうです。

 

これが日本の現実です。多くの若者が、生活が苦しいために病院へも行けずに、健康を犠牲にしてまで働いているという、胸が痛くなるような実態が見えてきます。