統計を見ると、2020年の非正規雇用は10年前の2.5倍となっています。雇用問題から派生する中高年のひきこもりという問題は、もはや他人事ではありません。ここでは臨床心理士の桝田智彦氏が、「中高年のひきこもりの実態」に迫っていきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「高学歴・高収入」から転がり落ち…中高年ひきこもりの悲惨な実態 ※画像はイメージです/PIXTA

【関連記事】「ひきこもり」は「氷河期世代の男性が圧倒的に多い」という実態

「一人前の社会人」だった「中高年のひきこもり」

内閣府の中高年のひきこもりに関する実態調査(2018年)では「35歳での無職の経験」が53.2%と半数以上いました。しかも、「働いた経験」という項目では、「正社員として働いたことがある」人が73.9%におよんだのです。

 

つまり、中高年のひきこもりの方々の多くは社会人として通用していたし、社会人として「まっとうに」生きてきた人たちなのです。ということは、人づきあいでも、人間関係でもふつうにこなしてきた人たちのはずです。

 

今回の2018年調査ではこのことを示す興味深い数字があります。40歳~64歳の中高年層のひきこもりの方々に、人と対したときの感情や感じ方について質問した項目を見ていきましょう──。

 

●「自分の欠点や失敗を少しでも悪く言われると、ひどく動揺しますか」という質問に対して、「はい」53.2%、「どちらかといえばいいえ」46.8%と、かなり拮抗している。

 

●「人といるとバカにされたり、軽く扱われたりしないか、不安になる」という質問への答えは、「はい」「どちらかといえばはい」が48.9%、「どちらかといえばいいえ」51.1%で、ほとんど差がない。

 

●「初対面の人とすぐに会話できる自信がある」という質問に対し、「はい」「どちらかといえばはい」が44.7%、「いいえ」「どちらかといえばいいえ」が55.3%だった。

 

これらの数字が表しているのは、中高年のひきこもりのかなりの方々は、個人の資質や性格などが原因でひきこもっているわけではないということです。

 

では、そのような「一人前の社会人」だった人たちがどのようにしてひきこもってしまうのでしょうか。