統計を見ると、2020年の非正規雇用は10年前の2.5倍となっています。雇用問題から派生する中高年のひきこもりという問題は、もはや他人事ではありません。ここでは臨床心理士の桝田智彦氏が、あらゆる視点から「中高年のひきこもりの実像」に迫っていきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
パワハラや介護で退職…社会から外された「中高年ひきこもり」の悲惨 ※画像はイメージです/PIXTA

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孤独な日本人…中高年ひきこもりに「新しいタイプ」

失職や病気、大切な人の死などをきっかけに、人は誰しもひきこもりになる可能性があります。しかも、日本は先進国のなかで「もっとも孤独な国民」(※)。社会とのつながりが希薄で、誰からも助けてもらえずに孤立していく人たちが多く存在するのです。

 

※ イギリス・『レガタム研究所』が発表した国の繁栄に関する統計の項目「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」の指数より。

 

そのことが人々をひきこもりへと陥らせ、また、ひきこもりからの回復を遅らせる大きな要因ともなっています。ひきこもりは決して他人事として片づけられる問題ではないのです。

 

とはいえ、ひきこもる人たちには共通項が見受けられるのも確かです。いったいどのような人たちが、どのような過程をへてひきこもっていくのでしょうか。現に今、ひきこもっている方たちの心のなかでは、どんな苦しみや葛藤が渦巻いているのでしょうか……。

 

ここでは、ひきこもりの人たちに共通する資質や心性、親子関係を含めた環境、心の動きなどを見ていきながら、中高年のひきこもりの実像に迫っていきたいと思います。

 

ひきこもりといえば、若年層(15歳~39歳)のものというイメージが一般的でしょう。実際、内閣府はひきこもりの実態を過去に2回、調査していますが、いずれも若年層を対象にしていました。

 

しかし、ひきこもりの長期化や高齢化にともない、どうやら中高年層(40歳~64歳)にもひきこもっている方たちが多くいるようだと考えられるようになりました。そして、内閣府も2018年には中高年を対象にひきこもりの実態調査を実施したのです。

 

その結果から、従来の若年層では見られなかった、中高年に特有の「新しいタイプのひきこもり」が浮かびあがってきました。