オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ここでは、学苑に通う生徒の保護者から寄せられた悩み・質問に、同氏が答えていきます。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。
「うちの子は友達に好かれていない?」母の悩みを教師がズバリ解説 ※画像はイメージです/PIXTA

「どうしてうちの子には友達が…」子どもたちの答え

お母さんは「どうしてうちの子には友達ができないんですか? どうしてみんなにいじめられるんですか?」と心配していましたね。

 

子どもたちの様子を観察したところ、他の生徒は「博博と話しても何を言っているか分からない」と口をそろえます。どうやら意思疎通ができていないようです。博博は想像力が豊かなのであり、頭が悪いわけでは全くありません。でも自分の考えをうまく表現できないのです。

 

博博は話すスピードが速く、動きもせわしなく見えます。体の機能が影響しているかもしれないので、かみ合わせや他の問題がないか、一度検査してみてはどうでしょう? きっと心の迷いが晴れ、自分を受け入れやすくなり、改善への道を一歩踏み出すきっかけになります。

 

また、体に問題があろうとなかろうと、家で「はっきりと話す」のを助けてあげることはできます。博博が好きな物語の本を何冊か買ってきて、その中の会話文を大きな声で読ませます。お母さんは頑張れ、よくできたね、と言葉にしてあげましょう。

 

日常生活の中でもなるべく博博の意見に耳を傾け、あとはクラスの「個人発表会」の時間を使って、みんなの前で自分を表現するよう勧めてあげましょう。成功体験を重ねることで、言葉のコミュニケーションを苦痛だと感じなくなります。

 

次は心の問題です。

 

博博は前の学校でよくいじめられていたのでしょう。心に不満を抱え、自分に自信がありません。いつも自分は嫌われ者で、誰も自分を信じないし、助けてもくれないと思っています。こうした感情は、常に人間関係や学業成績の足を引っ張ります。

 

昨日の木木との言い争いは非常に典型的な例です。

 

博博は小遊(シァオヨウ)と池に木の橋をかけて遊んでいました。それを見た木木は自分も仲間に入れてほしいと思って、「一緒にやらせてよ」と言って橋の上に飛び乗りました。

 

でも博博にはその声が聞こえなかったので、またいじわるな木木が場所を横取りしにきたんだと思い、その場に隠れて木木のひどいあだ名を考え、何度もその名前を叫びました。腹を立てた木木は博博を突き飛ばそうとしましたが、反対に枝で叩かれてしまいました。

 

木木はかんかんになって、地面にあったハンマーをつかんで追いかけようとしたところ、ちょうど先生に出くわしたのです。先生は二人が青筋を立て、顔を真っ赤にして怒るのを見て、まずは一人ずつ落ち着かせてから、ゆっくりといきさつを聞くしかありませんでした。