オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ここでは、学苑に通う生徒の保護者から寄せられた悩み・質問に、同氏が答えていきます。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。
「うちの子は友達に好かれていない?」母の悩みを教師がズバリ解説 ※画像はイメージです/PIXTA

話を聞いてわかった、博博の「心の問題」

話をする中で分かったのは、木木が橋の上に飛び乗った時、博博がまずその意味を確認していれば。博博に大声であだ名を呼ばれた時、木木がまず注意を促していれば。木木に突き飛ばされそうになった時、博博が仕返しをせずに学苑の規定どおり裁判を起こしていれば。いずれもこのケンカは起こらなかったということです。

 

「でも木木がまたいじめにきたと思ったんだ」と博博。「誰がいじめるもんか! いつもけしかけてくるくせに」と木木。「でも先に手を出したのはそっちだよ」と博博は悔しそうです。

 

「裁判所(※)に訴えればいいのに、どうして枝でぶったりしたの? ほら! 手にケガをしたよ。痛い!」「起訴状を書くなんて面倒だよ! 書けっこない」と博博。「先生や他の人に頼んで書いてもらえばいいんだよ!」意外にも木木が方法を教えてくれました。でも博博は「誰も助けてなんてくれないよ」と言います。

 

※ 学苑内に設置されており、判決によっては「一人二袋の砂袋を砂場に運ぶ」などの労働が科せられることもある。

 

「そうかな?」先生は博博を見つめます。「先生は頼まれてないよ! 私が留守でも、事務室の人や図書館のボランティアのおばさんがいるでしょう。他の先生だってみんな助けてくれるよ」と言いました。博博は「本当?」とまだあまり安心できない様子です。

 

「他人にいじめられる前に、こっちから威嚇してやる」と思っていると、このように他人の言動を誤解しがちです。思わぬ反応に相手はびっくりして、当然仲良くしたいとは思えなくなります。

 

また、他人を自分の思い通りに動かそうとするところも、相手にストレスを与えます。

 

例えば麒麒(チーチー)と掃除の分担場所を取り合った時、博博は負けるのが怖くて、じゃんけんで決めるのを断固拒否しました。かといって別の方法を思いつくこともできません。

 

先生は三十分も話を聞いてようやく理解したのですが、あの日博博はすでに一部の掃除を済ませていて、そこを麒麒に取られたら自分は損をすると思ったのです。次の日からは、じゃんけんに反対することもなくなりました。

 

「絶対に損したくない」という考えも、博博に友達ができにくい原因の一つです。

 

例えば、ある時、隣の席の淇淇(チーチー)の本が博博の机の上に置いてありました。すると博博はすぐに先生にそのことを言いに来ました。

 

でもその時先生は雲雲(ユンユン)のことで忙しかったので、何気なく「淇淇の机の上に戻してあげたら?」と言いました。その瞬間、博博は「どうしてそんなことしてあげなきゃいけないの? 淇淇に自分で戻すように先生が言ってよ!」と怒りを露(あら)わにし、ジタバタと暴れて抗議しました。

 

その手が当たって、雲雲が「やめてよ!」と言っても、頭に血がのぼった博博は聞く耳を持ちません。先生は新たな衝突を避けるため、雲雲のことは後回しにせざるを得なくなりました。

 

こんなことが起こる度に、クラスメイトは博博のことを心が狭くて話が通じない子だと感じ、自然と距離を置くようになりました。