中高年のひきこもりという、命にも関わる深刻な社会問題。ここでは臨床心理士の桝田智彦氏が2018年12月に内閣府がはじめて40歳~64歳の5000世帯の男女を対象に行った実態調査、『生活状況に関する調査』に基づいて、「中高年ひきこもりの現状」に迫っていきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「ひきこもり」は「氷河期世代の男性が圧倒的に多い」という実態 ※※画像はイメージです/PIXTA

「正社員として働いたことがある」人の驚くべき割合

◆期間

 

ひきこもりの期間については、「3年以上5年未満」が21.3%と最多ではありますが、7年以上の方たちを合計すると46.7%にもなります。半数近くの方々が7年以上もの長期にわたりひきこもっているわけで、いったんひきこもると、ふたたび外出できるようになるのが容易ではないことがみてとれます。

 

◆就職について

 

今回の調査では注目すべき結果がいくつかありますが、なかでも驚いたのが「35歳での無職」を経験した人が53.2%もいるという事実です。35歳以上ではじめて無職になったのですから、それまでは働いていたわけです。

 

しかも、「働いた経験」という項目を見ると、「正社員として働いたことがある」人が73.9%もいるのです。これはある意味、驚くべき数字だと言えます。35歳になるまえは正社員として働いていた人たちが、中高年のひきこもりのなかにはかなりの割合でいると言ってよいでしょう。

 

「働きにも出ない、怠け者がひきこもりになるのだ」といった自己責任論は、53.2%(35歳以上で無職になった)と73.9%(正社員として働いた経験がある)という数字のまえでは、もはや通用しないと言ってもいいと思います。

 

◆年齢のばらつき

 

中高年ひきこもりの人数の中で、もっとも多い年齢層が、40歳~44歳と、60歳~64歳の25.5%でした。40歳~44歳はまだまだ働き盛りの世代です。そして、40~44歳の方々といえば、「就職氷河期」の直撃をモロに受けた年代だと言えるでしょう。

 

就職氷河期とは、1993年から2005年頃に大学を卒業した人たちを見舞った、戦後最大の就職難の時期のことです。

 

2003年の大卒の就職率は実に55.1%まで落ち込んでいるのですから、半分近くの人たちが大学は出たけれど、就職できなかったことになります。

 

さらに、40歳~44歳では33.3%もの方たちが20歳~24歳でひきこもり状態になっているのです。就職氷河期によって就職できなかったことで、ひきこもるようになった方が多くいるという可能性が考えられます。