2020年の非正規雇用は10年前の2.5倍となりました。雇用問題から派生する中高年のひきこもりという深刻な問題は、もはや他人事ではありません。ここでは臨床心理士の桝田智彦氏が、地方で暮らす「ひきこもりの現状」について迫っていきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「非正規でさえみつからない」…中高年ひきこもりを襲う残酷な偏見 ※※画像はイメージです/PIXTA

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意外にも、ひきこもりは「都市部より地方に多い」

ひきこもりというと、ご近所とのつきあいも少ない都会のマンションや戸建ての一室で息を殺しながら暮らしている、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、実際には、都市部よりも地方のほうに、ひきこもる人が多い傾向にあります。これも、数々の調査から読み解いていくことができます。

 

まず、ご紹介したいのが、長野県が2019年2月から4月にかけて、15歳~65歳を対象にした「ひきこもり等に関する調査」です。この調査によると、ひきこもりの出現率は0.20%でしたが、さらにこまかく見ていくと、都市部が0.16%に対して、町村部は0.36%と、都市部よりも町村部のほうがひきこもりの出現率が高かったのです。

 

また、秋田県藤里町では戸別訪問(事実上の全軒調査)が行われました。藤里町は白神山地のふもとの人口3800人の小さな町。町の社会福祉協議会の人たちが先頭に立ち、自治会や民生委員、PTAなどのネットワークを活用して、一軒ずつしらみつぶしにまわって調査をしたというから驚きですし、頭が下がる思いです。

 

その結果、ひきこもりの方の率が人口全体の8.74%にものぼることがわかりました。65歳以上の高齢者が人口の4割を超えている町で、11人に1人がひきこもっていたのです。

 

これらに対する都市部の調査としては、町田市の調査があげられます。全軒調査ではありませんが、町田市でも20歳~64歳を対象にひきこもりの実態調査を行っていて、結果は、ひきこもり率が5.5%でした。約18人に1人がひきこもっていることになります。

 

この数字自体、内閣府の100人に1人よりもはるかに多いわけですが、地方である秋田県藤里町の8.74%よりも低くなっています。

 

なぜ、都市部よりも地方にひきこもりが多いのでしょうか。