中高年のひきこもりという、命にも関わる深刻な社会問題。ここでは臨床心理士の桝田智彦氏が2018年12月に内閣府がはじめて40歳~64歳の5000世帯の男女を対象に行った実態調査、『生活状況に関する調査』に基づいて、「中高年ひきこもりの現状」に迫っていきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「ひきこもり」は「氷河期世代の男性が圧倒的に多い」という実態 ※※画像はイメージです/PIXTA

ひきこもりは「男性が圧倒的多数」という事実

◆人数

 

次に、中高年ひきこもりの数について見ていきましょう。40歳から64歳のひきこもりの人数は61.3万人です。前回、2015年に行われた「15歳から39歳の若年層を対象にした調査」では、その数が54.1万人でした。同時期の調査ではないにしろ、大まかには若年層よりも中高年層のひきこもりのほうが多いと考えてよいでしょう。

 

これらの数字から、ひきこもりが若者に特有の現象ではないこと、そして、ひきこもりの高齢化が見てとれます。

 

また、15~39歳の54.1万人と40~64歳の61.3万人を合計すると、100万人超えの115万人もの方々がひきこもっていることになります。

 

日本の総人口が約1億2000万人ですから、約100人に1人の割合です。ひきこもりの方々の支援に取り組んできた私どもでも、この数字をあらためて突きつけられたときには衝撃を受けました。

 

◆男女比

 

続いて、61.3万人という数字を男女別で見てみましょう。76.6%が男性で占められていて、圧倒的多数が男性です。過去2回の若年層の実態調査における男女比も、男性75~80%、女性20~25%とほぼ変わりがなく、中高年でも若年層でも男性の割合が非常に高いことがわかります。

 

これはいったいなぜなのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一般的な感覚に沿って考えてみると、少し見えてくるものがあります。

 

たとえば、女性の社会進出が進んだとは言え、今なお男性のほうが女性よりもはるかに社会参加を求められる存在と言える点です。実際、昼間から仕事もせずにブラブラしている男性には厳しい視線が向けられやすく、場合によっては「奇異な存在」とみなされがちです。

 

そのため、職を失って無職になった男性たちは、世間の厳しい目にさらされるつらさから、外出することに対して気が重くなってしまいます。それがやがて不安を惹起させ、心を萎縮させていき、ひきこもってしまうケースも多いのです。

 

いっぽう、女性の場合は幸か不幸か、日本には家事手伝いや専業主婦といった「肩書き」が違和感なく受け入れられる風土があります。そのため、社会参加をしていなくても、また、無職であっても、男性のように厳しい視線を感じなくてすむように思います。

 

そのため、ひきこもりたいという思いや衝動は男性よりも軽減され、結果として、ひきこもる女性の人数は男性よりも少ないと考えられてきました。

 

ただし、女性のひきこもりには見えづらい面があり、実際には調査結果の数字よりもはるかに多く、男性のひきこもりとさして変わらないのではないかとも言われています。