グローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる中山てつや氏の著書『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』より一部を抜粋・再編集し、職場における諸問題について解説する。
「仕事のできる会社員」が、ことあるごとに上司から説教を受けていたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「上司が変わるだけで評価が正反対」になるのはなぜか

同じ会社で、同じ人事制度のもとで、同じ仕事をしていても、上司が変わるだけで評価も正反対に、真逆へと変わってしまうのは、なぜなのでしょう。

 

企業の人事に携わる多くの社員及び関係者が、少しでも「フェアな評価」がなされるような「人事制度の構築」に取り組んでいます。また、常に変化する社会情勢に対応できるような仕組みを、作り上げてきました。改善しようとする努力は大切ですし、今後も更に進化していくものと確信しています。

 

しかし、いかに優れた制度やシステムを設けたとしても、仕組みを用いて実際に評価するのは、直属の上司です。人事制度や、評価の仕組みが、直接部下を評価するわけではありません。たとえ自動評価装置のようなオート機能ができたとしても、運用が問題なく、円滑に進むとは思えません。なぜなら、運用者が常に、「生身の人間」だからです。

人間は「上に行けば行くほど」保身に走ってしまうもの

人間であれば誰しも、自分の言うことに、素直に従う者を、配下に置きたいと考えます。会社であれば、上司は自分の意に沿った、使いやすい社員を部下にしようとします(もちろん、例外はあると思いますが)。

 

諸事情で、仕方なく受け入れる部下もいます。また、「こいつは使える!」と思った部下が、実はそれほどでもなかったりします(この上司にとっては、の話ですが)。しかし、上司は本質的に、自分と気心の合う部下と、気持ち良く、自分のペースで仕事をしたいと考えます。

 

部下を評価する時にも、自分と肌が合うかどうか、気が合うかどうか、がいつのまにか判断基準となってしまいます。更に、その傾向は、職責が上がれば上がるほど顕著となります。「上に行けば行くほど好き嫌い」たるゆえんです。

 

上司が、会社の経営幹部ともなれば、職務権限も強くなるので、自分の意思を、もっと貫きたい欲求にかられるものです。時と場合によっては、「俺は偉いんだぞ!」という態度に表れることもあります(個人差はありますが)。

 

部下に対する支配欲も、必然的に強まり、「好き嫌い」が評価の基準として、色濃く反映されるようになります。しかも、自分の意に反して、方針に素直に従わない部下がいたら、排除しようとします。異なる意見に耳を傾け、違うやり方を取り入れるくらいの度量も欲しいところですが、そのような懐の深い器を持つ人は、残念ながら、あまり多くいません。たとえいたとしても、評価の段階になると、どうしてもギリギリのところで、「合う合わない」や、「好き嫌い」が作用してしまうものです。

 

上司からすると、せっかく手に入れた「上位職」です。部下に寝首を掻かれて、職位を失うことだけは、何としても避けなければなりません。「上に行けば行くほど」自分の身が可愛くなり、知らず知らずのうちに保身に走ってしまうのも、そう考えると頷けるわけです。

 

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中山 てつや

1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。