算数に「生まれつきのセンス」はあまり関係がない
浜学園にも入塾テスト(公開学力テスト)がありますが、出題の7割は学校の教科書の単元をベースとした基本問題で、残り3割はその単元をいろいろ合体させたり、見た目がちょっと違うように工夫したりした応用問題になっています。
そのような問題構成によって平均点が70点くらいになるように調整しています。
この入塾テストの段階でその子どもの「算数に対するセンス」が見えるかというと、決してそんなことはありません。計算力がかなりある子ども、問題文がしっかりと読めている子ども、応用問題に挑もうとする姿勢が見える子ども、などということはわかります。しかしその差は、入塾して2週間や1ヵ月もたてば、すぐに埋まってしまいます。
入塾テストでははじめて見る問題に驚いて失点していた子どもも、通塾するうちに感覚をつかんでいきます。そのタイプの子どもが勉強の楽しさに気づき、うまく塾の指導の波に乗ると、びっくりするぐらい伸びてくるのです。
算数というのは、パズルやクイズを解く感覚とその知的な部分を学問に落とし込んだ教科です。
特に灘中の入試問題はその傾向が強いですが、算数を得意科目に育てられるかどうかは生まれつきのセンスではなく「算数をゲーム感覚で楽しめるかどうか」が分かれ道になります。
「10分かけて理解する子」と「1分で名案が浮かぶ子」
「算数が好き」というのも大きな要素ですが、例えば、ある生徒が講師に教えてもらいながら一生懸命に図を描いたりグラフを描いたりして10分かけて理解した問題を、自分なりの見立てで「これ、こうじゃない?」とたった1分で解いてしまう子どもがいます。
前者にとって算数は苦しくてしんどい「勉強」ですが、1分で名案が浮かぶ子どもにとっては「ゲーム感覚」なのです。
ゲームだから苦痛ではありません。電車に乗っているときもバスに乗っているあいだも常に算数のことを考え、「あの問題どうやって解こうかな?」と「考えている感覚」が、問題をやっているときに前向きに発揮されるようになります。
子どもにとっては考えている感覚が楽しいからますます算数が好きになりますし、算数が好きだから考えることも楽しくなるのです。
このタイプの子どもは、問題を読みながら同時に手が動いています。一方、総合力はあるけれど、算数の難問だけが苦手というタイプの子どもは、確実にというぐらい問題を読み込んでから解こうとします。この差が大きいのです。
講師から教わったひとつの解法を繰り返すことが勉強だと思っている子どもにとって、算数はなかなか手ごわい教科です。「小学生だし、たくさんの解法を理解するのは大変だろうからこれひとつでいいよ」と指導したら、その子どもは「やらされているパターン」に陥り、伸びなくなってしまいます。
しかし、固定のパターンではなくいろいろなやり方を見聞きしながら、そのなかで自分にとって一番いい解き方をチョイスしていくことが勉強なのだということがわかると、感覚的に問題を解くことが楽しくなってきます。
これを私は「ゲーム感覚」と表現していますが、算数の成績を伸ばす実践的な力になるのです。
本来子どもはゲームが得意ですから、みっつの解法を教えたらそのみっつを上手に使いこなすようになります。そのうちに最も短時間で答えにたどり着く解法を自分で選択できるようになりますし、ひとつひとつの解法に価値を見いだすとさらに頭を使うようになります。
その段階に進んだ子どもは「勉強」という感覚を超えて、算数の本質を楽しめるようになるのです。