灘中合格者数16年連続1位を誇る浜学園の橋本憲一塾長は、中学入試の段階で最難関中を狙う学力がついている子どもは、大きく「得意科目が突出した凸凹タイプ」と「すべてが平均的な優等生タイプ」の2パターンに分かれるといいます。それぞれの個性を生かして上手に学力を伸ばす方法を見ていきましょう。※本連載は橋本憲一氏の著書『灘中に合格する子は学力のほかに何を持っているのか: ワンランク上の志望校に受かるための能力と習慣』(ポプラ社)より、一部を抜粋・再編集したものです。
「得意科目が突出した凸凹タイプ」と「すべてが平均的な優等生タイプ」…成績を上げる方法【名門塾の塾長が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

得意科目が突出した「凸凹タイプ」の伸ばし方

中学入試の段階で最難関中を狙う学力がついている子どもには、大きく分けてふたつのタイプがあります。弱点はあるけれど自分の得意科目が突出して強い「凸凹タイプ」と、どの教科もまんべんなくこなす「平均的優等生タイプ」です。

 

しかしいずれも長所もあれば短所もあります。能力を上手に伸ばすにはおのおのの個性に合った指導が必要なのです。

 

凸凹タイプの場合、例えば算数に強い子どもだと、みんなが10分かけてやっと解答する問題を、2〜3分で解いてしまったりします。一方で得意科目と不得意科目の差が激しく、親としては弱点を潰してまんべんなく成績を引き上げたいと考えます。

 

そのとき周囲の大人が間違えやすいのが、凸凹タイプの子の弱点を潰そうとして中学生・高校生レベルと同じような指導をしてしまうことです。

 

その最たるものが単語帳ですが、まるで中学生・高校生の定期テスト対策のようなテクニック論を教えてしまいます。しかし相手はまだ小学生です。本人自身の弱点に対する意識や、受験に対する考え方が未熟なのですから、大人の思考で「こうやったらうまくいくよ」とすすめてもうまくいかないことがよくあります。すぐに単語帳はカバンの下のほうでグチャグチャになり、使えなくなるのがオチです。

 

凸凹タイプの弱点対策というのは、やんわりと教育していかない限り、なかなか難しいものです。入試の戦略としては弱点を潰すことを考えるよりも、いま突出している才能がさらに飛び抜けるように努力したほうが有効なのです。その子どもの飛び抜けた才能を活性化させながら、ちょっとずつ弱点の穴を埋めていくことが大切です。

 

先ほどの単語帳の使い方で言うと、語句の知識が不足している子どもが1〜2週間でも取り組んだ単語帳があれば、その範囲でテストに出た正解例を探して、本人に効果があることをわからせることが大事です。

 

そして本人が、少しでも自分から本気で弱点の穴を埋めようとし始めたら、きっと本番の入試では突出した得意科目・単元で点数を稼ぎ弱点部分の帳尻を合わせ、合格することができるのです。