リーダーの資質を問う、極めてシンプルな行動理由
このエピソード自体は決して大きなことではないが、たとえ自分がどんな立場であっても、自身の「肩書き」に囚われず、その時必要なことを自然にできるか、という姿勢がリーダーには問われる。そこにあるのは、「チームとして、より良い仕事をするために、自分が出来ることをやる」という極めてシンプルな行動理由ではないだろうか。
人は肩書きという「ラベル」が付けられると、「肩書き外」のことを自分の責務だと思えなくなる。
ある人に「新人」というラベルが付いていれば、雑務も重要な責務の一つであると暗黙のうちに捉えるが、「社長」というラベルが付いていればそうではないだろう。
しかし前述のように、内村は「肩書き外」のことを当たり前にやる。
他人の立場やポジションにニュートラルであるがゆえに、自分自身の立場も「変更可能」なニュートラルなものにできている。
例えば、クライアントに向けたプレゼンの戦略を組み立て、周囲の部下に指示を出している上司がいる。そんな彼が、コピー用紙の補充や休憩時のコーヒー出しを特に何も言わずにしてくれていたら、そんな姿を見た周りの部下や後輩はどう思うだろうか。
大会議室での会議終わり、机や椅子の位置をもとに戻す作業をリーダーが率先してやってくれていたらどう感じるだろうか。
世間一般では若手社員に任せてもいいようなことを、自ら進んでやっている姿は、たとえ一つ一つは小さなことであっても、それが当たり前のことであっても、その積み重ねがリーダーへの好意を生み出す。
このように「リーダー」という存在がその肩書き外のことを当たり前のようにやる姿勢は、部下や後輩が「尽くしたくなる」動機となる。