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「他人のパフォーマンス」に素直であれ
一般的に「よきリーダーの条件」の一つに、部下の才能や能力を見出し、伸ばすことが挙げられる。内村はそれを無意識的に、そしてとても上手に実践している。
テレビなどの収録現場における内村は、後輩芸人や出演者の発言やボケに、とにかく「よく笑う」。
読者の皆さんも、テレビの中で内村がよくお腹を抱えて笑っている様子が印象にあるのではないだろうか。しかもそれは決してMCや先輩の目線から笑っているのではなく、常に“家のリビングにいるお父さん”のようにただただ笑う。
芸人同士であれば、心のどこかで「笑いを取る」ということにライバル心が働くもの。しかし内村には今のポジションに限らず、尖ってギラギラだったであろう若手時代の頃から“それ”がなかった。
彼は誰が、どんなことを言っても、それがおもしろければ「笑う人」だった。年齢を重ねるにつれて、丸くなっていったのではなく、最初からそうだというのだから驚く。
ライバルは常に「自分」。だから相手に素直になれる
「多分、他人に対してうんぬんに気持ちが向いてなくて、常に自分がライバルなんですよね。だから、おもしろいことにはおもしろいねって言っちゃえるんだと思います。で、満足はしない人です。満足しないのも、誰かに対するものではなくて、自分に対することだけ。倒すべき相手とか、ハードルも全部自分」(ケイマックス・飯山氏)
このような姿勢を内村が取れるのは、彼が他人のパフォーマンスというものに対して、常に「素直である」ことによるものが大きい。内村は芸人としてのライバル心が、「他者」ではなく「自分」に向いているため、それを作り出した人が誰であっても、常に「笑い」というパフォーマンスに対して素直でいられる。
ここでの「自分」とは、「こうありたいと思い描く理想の自分自身」を指す。そこにすべての興味と感心が全集中しているので、内村には「他者」を僻(ひが)んだりヤキモチを焼いたりしている隙間や余地がまるでない。
内村を鑑みると、他者に対しライバル意識を抱くことが、いかに無益であるか痛感する。だが言うは易し、行うは難(かた)し、これがなかなか難しい。
筆者自身も広告・プロモーションのプランナーとしての会社人生を歩んできたが、恥ずかしながら、とくに若い頃は他のプランナーや同期が出す企画を、「おもしろいね!」と素直にはなかなか言えなかった。ましてや競争社会である芸能界で、このような人間性を持っていることは稀有(けう)であると思う。