業界内での信頼もとても厚く、「理想の上司ランキング」では5年連続1位に輝いている、内村光良さん。博報堂のクリエイティブディレクターである畑中翔太氏が、内村さんから学んだ「指導のポイント」を紹介します。 ※本記事は、『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・編集したものです。
みんなの前で絶対にミスを指摘しない「内村光良」が、しかたなく注意するときに使う奥義 (※画像はイメージです/PIXTA)

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ウッチャンは「みんなの前で指摘をしない」

仕事において誰かがミスを犯したり、パフォーマンス不足であったりしたとき、「否定」「批判」「非難」といった行動は無益でしかない。

 

では一切何も言ってはいけないかというと、そうではない。この項では、仕事のパフォーマンスに対する「改善」や「指導」を愛情をもって行う上で、重要な技術についてお伝えしたい。

 

潰れる人をつくらない」コーチングにおける指導のポイントとして、「みんなの前で指摘をしないというアプローチを内村は実践している。

 

内村と公私ともに30年以上の付き合いがある、ケイマックスの代表取締役社長・工藤浩之氏も、

 

彼はみんながいる前で一人を攻撃するようなことは絶対しない

 

と断言する。

 

「出演者がいっぱいいるところで、スタッフにダメ出しや注意をしたりはしません。あとでご飯を食べながら、あのときはああだったんじゃない、とそっとそのスタッフに言うかもしれませんが、その場でみんなの前ではダメ出ししない。内村さんのそういうところ、尊敬します」

他者の前での指摘は、相手に負の感情を芽生えさせる

仕事において誰かがミスを犯したり、パフォーマンス不足であったりしたとき、私たちはどうしても、その瞬間の感情に乗せ、「その場」で指摘をしてしまうことが多い。しかし「その場」には本人だけではなく、他の同僚や後輩がいる場合がある。

 

そのような状況は、指摘をした相手に対して、「羞恥心」という、“指導とは異なる罰”を与えてしまうことになる。

 

よくドラマなどでも、過去に恥をかかされた人間が相手に復讐をするように、「羞恥心」は「憎しみ」という感情を育てる。そして、この憎しみという感情は、信頼や愛着といった感情をエンジンとする、人を動かすチームづくりにとっては全く逆行するパワーになってしまう。

 

もし、あえて周囲に人がいる前で部下を指導して、「こんな恥ずかしい思いをしたくないから、もう同じ過ちをしない」と思わせようとしているリーダーがいたら、即刻そのアプローチをやめることをお勧めする。

 

支持されるリーダーはその場の感情をぐっとこらえて、部下と二人きりになったときにしっかりと指導を行う。実にシンプルなことであるが、受ける相手側にとっては非常に大きな違いである。

 

そしてその際も、自身の感情に乗せて責めるのではなく、改善すべき点、改良を求めたい事実のみを毅然と「指摘」することが重要。事実を事実として伝えるのみで、それ以上の「否定」は包含しない。これであれば指摘された側も、「誤り」を「誤り」としてシンプルに認識でき、それ以上の落ち込みや反発といったマイナスの感情が芽生えることなく、「改善」すべき点が理解できる。

 

この「みんなの前で指摘しない」という手法の習得には、多少なりとも訓練が必要かもしれない。だが逆にいうと、訓練次第で取り入れやすい方法だともいえる。