1990年代初めのバブル経済崩壊後に訪れた「就職氷河期」。就職氷河期世代の不遇から派生する問題は、もはや同世代だけのものにとどまらない。今後、日本社会にはなにが待ち受けているのか? 日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏がデータをもって指摘していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
「氷河期世代の不遇」がもたらす問題…経済成長の足かせに (※写真はイメージです/PIXTA)

「お金を使わない働きざかり世代」の誕生

一国の経済の大きさを測る指標の一つにGDP(国内総生産)があるが、それを構成する項目のうち、私たち個人や世帯(家計)にとって最も関連があるのは、個人消費だ。

 

そして、わが国のGDPにおける個人消費は、2019年度が約300兆円で、同じ年のGDP全体の約550兆円のうち、およそ55%と半分以上を占める。すなわち、それだけ個人消費の動向はわが国の経済に与える影響が大きいといえる。

 

そんな個人消費の勢いの弱さが、わが国の経済成長の足かせになっているのだ。

 

それに関して、ここでは、総務省「家計調査」から世帯別の消費動向をみてみよう。[図表]には、世代ごとの二人以上の勤労者世帯における1ヵ月当たりの消費支出額について、年齢階級別にそれぞれ示している。

 

資料:総務省「家計調査」を基に日本総合研究所作成 注1)2015年を基準とする帰属家賃を除くCPIで実質化。 注2)各世代の年長者が各年齢区分の最後の年に属する年と、その前後の年を含む3年移動平均。凡例の〈〉内の数字はその世代が属する年齢区分数を表す。 注3)一部の世代のマーカーのデータは、該当の年齢区分における3年移動平均がとれないため、2020年1~3月期までのデータを用いて算出。
[図表]消費支出(二人以上の勤労者世帯) 資料:総務省「家計調査」を基に日本総合研究所作成
注1)2015年を基準とする帰属家賃を除くCPIで実質化。
注2)各世代の年長者が各年齢区分の最後の年に属する年と、その前後の年を含む3年移動平均。凡例の〈〉内の数字はその世代が属する年齢区分数を表す。
注3)一部の世代のマーカーのデータは、該当の年齢区分における3年移動平均がとれないため、2020年1~3月期までのデータを用いて算出。

 

※ 団塊世代…1947~1949年生まれ。現在、70代前半。

  新人類…1955~1964年生まれ。現在、50代後半~60代半ば。

  バブル世代…1965~1969年生まれ。現在、50代前半~50代半ば。就職は超売り手市場。

  団塊ジュニア世代…1971~1974年生まれ。現在、40代後半~50歳。多くが就職氷河期に身を置いた。

  ポスト団塊ジュニア世代…1975年~1984年生まれ。現在、30代後半~40代半ば。多くが就職氷河期に直面した。新人類とポスト団塊ジュニア世代は比較的長期に該当するため、上の5歳を前期、下の5歳を後期と分類。

 

もっとも、消費支出額を比較する際には、例えば、ある商品を同じ量だけ買っても、その商品の価格が上昇していれば、消費支出額はそれだけ増加することから、物価による影響を取り除いたうえでみる必要がある。そこで、[図表]の折れ線グラフは、物価変動の影響を除いたベース(実質消費支出額)を示している。

 

それをみると、就職氷河期世代(団塊ジュニア世代、ポスト団塊ジュニア世代の前期と後期の一部)は、上の世代である団塊世代、新人類、バブル世代と比べて、実質消費支出額が少ないことがわかる。

 

同じ30代後半における実質消費額を比較すると、団塊世代が31.1万円、新人類(前期)が32.7万円、新人類(後期)が31.2万円、バブル世代が30.6万円支出するのに対し、就職氷河期世代である団塊ジュニア世代は29.1万円、ポスト団塊ジュニア世代(前期)が28.6万円の支出にとどまり、上の世代と比べて▲12%強〜▲5%強少ない。

 

また、40代後半においては、団塊世代が41.7万円、新人類(前期)が39.3万円、新人類(後期)が37.0万円、バブル世代が35.4万円支出するのに対し、団塊ジュニア世代は34.1万円の支出と、上の世代と比べて▲18%〜▲3.5%少ない。