1990年代初めのバブル経済崩壊後に訪れた「就職氷河期」。就職氷河期世代の不遇から派生する問題は、もはや同世代だけのものにとどまらない。今後、日本社会にはなにが待ち受けているのか? 日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏がデータをもって指摘していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
「氷河期世代の不遇」がもたらす問題…経済成長の足かせに (※写真はイメージです/PIXTA)

「好きなものには消費をいとわないが…」人口が多い団塊ジュニアの特徴

就職氷河期世代が消費を抑制する姿勢を具体的な事例でみてみよう。

 

例えば、上の世代とは違う、就職氷河期世代の節約傾向は、彼ら/彼女らがまだ若い、大学時代に既に現れていた。

 

学生の卒業旅行の平均旅行代金は、バブル絶頂期の1989〜1991年には20万円強だったが、就職氷河期に突入した1993年は12万円弱まで落ち込んだそうだ。そして、旅行する回数は旅慣れなどで増える一方で、1回当たりの旅行日数を短くし、料金を抑えるといった、景気悪化に直面した就職氷河期世代の節約傾向が紹介されている(日本経済新聞、1997年3月3日朝刊、「「2回」が増え1回あたりは節約―低価格化傾向の卒業旅行」)。

 

また、就職氷河期世代が中堅層となった近年では、顧客層が50代以上に偏っている百貨店が、新規開拓で同世代を含む40代をターゲットとするなかで、彼ら/彼女らの消費行動について、「好きなものには消費をいとわないものの、財布のひもを締めるところは締める」と百貨店担当者がコメントしている(日本経済新聞、2019年7月24日朝刊、「団塊ジュニアの『節約』攻略―高島屋、本物志向に照準」)。

 

ここで留意すべきなのは、[図表]の棒グラフの名目消費支出額に示すように、足許では一般的に消費支出額が一段と高まる40代後半に、就職氷河期世代の年長者である団塊ジュニア世代の人口ボリュームがさしかかることで、本来はマクロでみた消費の拡大が期待されるところだが、それが起きていないことである。

 

つまり、人口ボリュームが活かされずに消費が伸び悩み、わが国が経済成長するうえでの足かせになっているといえよう。

 

 

下田 裕介

株式会社日本総合研究所 調査部 主任研究員