1990年代初めのバブル経済崩壊後に訪れた「就職氷河期」。就職氷河期世代の不遇から派生する問題は、もはや同世代だけのものにとどまらない。今後、日本社会にはなにが待ち受けているのか? 日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏がデータをもって指摘していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
「氷河期世代の不遇」がもたらす問題…経済成長の足かせに (※写真はイメージです/PIXTA)

世代に関わらず、他人事ではない「氷河期由来」問題

1980年代後半から1990年代初めのバブル経済が崩壊し、その後2000年代前半まで続いた「就職氷河期」はあと数年で、その始まりから30年が経とうとしている。若い人たちのなかには、2019年に政府が就職氷河期世代への本格的な支援を打ち出すまで、「就職氷河期」といわれてもピンとこない人が多かったのではないだろうか。

 

そして支援の具体化とともに、就職氷河期に関して耳にする機会が増えるなか、2020年に入って以降、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、わが国の景気は大きく落ち込んだ。

 

こうした状況を受けて、これから就職活動を迎える学生は、不安な気持ちでいっぱいの一方、就職氷河期を経験せずに、または知らずに社会人として働いている人のなかには、「就職氷河期世代は大変だな」と思いながらも、「ああ、自分はその時代の人間じゃなくてよかった」と思っている人がいるかもしれない。

 

就職氷河期の問題を、その不遇な環境に身を置かざるを得なかった当事者たちの「個人の問題」として考えている人はいないだろうか。

 

もし、読者のなかでそのような思い・考えを抱いている人がいるのなら、改めてほしい。就職氷河期がもたらす問題は、もはや当事者・その世代だけのものにとどまらず、わが国の経済や社会全体への影響が、すでに一部が顕在化し、そして、今後も長きにわたって出てくる恐れがある。

 

ここでは、就職氷河期がわが国にすでにもたらしている問題を詳細にみてみよう。