オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ある日、勉強以外のことに才能を見つけた平平(ピンピン)の母と李氏は、「学歴」について話し合いました。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
オードリー・タンの母が「目標を見つけられない子ども」にかけた言葉 ※画像はイメージです/PIXTA

「目標を見つけられない」「ゲームばかりしている」子どもを心配するなら

この間、長男に平平の話をしました。すると自分が十歳だった頃の様子について、私がすっかり忘れていたことを思い出させてくれました。当時の私もあなたと同じように、感情の起伏が激しく、目的もなく日々を過ごす息子を心配し、強い意志を持ちなさいと言ったそうです。

 

そういえば、次男が五年生の時も、ゲームばかりしていることを夫と一緒に心配したものです。親は心配する生き物、そう思いませんか? 大切なのは、その気持ちにどう向き合うかです。

 

私は、心配する気持ちを子どもに伝えるという方法をとるようにしています。息子によると、私は子どもの行動を責めたり、何かを強制したりしないので、子どもは他人の目に映る自分を「鏡を見るように」確認して、今自分がするべきことを考えられるんだそうです。

 

当時、次男はゲームの時間を制限しようと考え、自分も納得できて、同時に夫や私の理解も得られる答えを見つけるまで、何度も何度も調整しました。

 

こうやって次男の問題は解決しましたが、長男の心配はそれからも続きました。彼はまだ自分の役割や目標を見つけられずにいたからです。十二歳になってようやく自分自身や周囲と素直に向き合えるようになり、十三歳になると、私に心配をかけることもなくなりました。

 

平平もまだ自分の役割が見つけられないだけです。これは人生のかかった問題ですから、答えが見つかるまで親は手出しできません。親が唯一できるのは、「たとえどんな答えが出ようとも、あなたを愛しているよ」と伝えることだけです。

 

長男が最も苦しみ、迷い、死んでしまいたいと思っていた頃、「もし僕がおかしくなって、路頭に迷っても、僕を愛してる?」と聞いてきたことがあります。

 

私はみすぼらしい格好で路上に行き倒れる息子の姿を想像した後、真面目な顔で「私に一円でも残っていたら、あなたにそんな思いはさせない」と答えました。でも息子は頑(かたく)なな態度で「そうじゃなくて、それでも愛してくれるか聞いてるんだ」と言います。「愛してるに決まってるじゃない!」そう言って私はその場に崩れ落ち、長いこと泣き続けました。

 

当たり前のものだと思っていた競争社会、学校教育、そして両親の期待が、どれほど子どもを追い詰めていたか。時間をかけてようやくそのことに気づいた私は、それまでの価値観を何もかも捨てることにしたのです。

 

あなたも平平のために「勉強だけが崇高なもの」という古い概念を少しずつ手放していますよね。子どもにとって何より大事なのは、「大切な人が自分を受け入れてくれる」ことです。だからあなたの強い心はきっと平平にも影響を与え、平平が自分自身を受け入れ、肯定するための助けになります。もしカウンセリングや薬による治療が必要なら、それも悪いことではありません。ただ必ず専門家に相談してください。