オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ある日、校内で1年生がクラスメイトをケガさせる事件が起こりました。動揺する母に、李氏が語ったこととは…。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
「ひどい息子を育ててしまった」嘆く親にオードリー・タンの母が金言 ※画像はイメージです/PIXTA

「ひどい息子を育ててしまった」…怒る母だが

* * * * *

子どもが友達に大ケガをさせてしまいました。悪いことをしたと自覚させるために、息子をきつく叱るべきですか? それとも同じことを繰り返さないために、もっといい方法がありますか?

* * * * *

 

 

揚揚(ヤンヤン)は学校でクラスメイトと棒の打ち合いをして、相手の頭に血が出るほどのケガをさせました。教室はパニックに陥り、お母さんであるあなたも不安に感じたことと思います。

 

あなたは自信を失い、ひどい息子を育ててしまったと思ったのでしょう。「学校でクラスメイトの頭にケガをさせるなんて、恥ずかしい!」と言っていましたね。でも、ケガをした方の子だって揚揚と同じ失敗をする可能性があったのです。

 

実は、「頭から出血するケガ」は必ずしもケンカなどの破壊行為が原因とは限りません。一緒に遊んでいて、うっかりケガをすることもあります。どちらにせよ、子どもはこうした出来事から本当の意味で学び、成長するものです。大人がその機会を奪ってしまうとしたら、あまりに残念です。

 

揚揚と今回ケガをした生徒は、どちらも暴力的な子ではありません。もっと言えば、二人ともとても自制心が強い子です。幼い頃から一番聞かされてきたのは「これはやっちゃダメ。あれはやっちゃダメ」という言葉だったのでしょう。そのため自分の力の強さがよく分からず、危険をともなう遊びがあることも知らなくて、仲良しの二人が遊んだ結果、これほどのケガを負うことになったのです。

 

先生の話では、揚揚は友達とほうきで打ち合いをしていて、手が滑って柄の部分が相手の頭に当たってしまったそうです。その瞬間、血が噴き出してきて、真っ青になった揚揚は、助けを求めて先生を捜し回り、やっとのことでその子を病院に送りました。

 

でも、揚揚は家では何も言わなかったので、お母さんは翌日先生からの連絡を受けて、初めてこの件を知りました。だから「悪いことをした上に私に隠していたなんて」と余計に怒ったのですね。


なぜ揚揚が黙っていたのか、考えたことはありますか?