生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人は誰でも、門を叩いてほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語る。活動を通して感じてきた、現場から行政にいいたいこととは…。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
役所に憤り…「生活保護費をアイドルに使ってしまう人」を助けたいが (※画像はイメージです/PIXTA)

「活動を盛り上げていこう!」希望の一歩の結果は…

結論をいえば、その役所は「大阪市」の配下。私は「国」と「大阪府」からお金をいただいていました。「大阪市」は絡んでいなかったため、知らなかったという話でした。

 

大阪市は「それと似たような取り組みを、ウチはウチでやっていますから。そちらとは関係ありません」というスタンスです。

 

私たちは、世の中のためによかれと思って団体を立ち上げ、活動を盛り上げていこうと考えていました。

 

しかしその一歩目で、二重行政のややこしさを見せつけられては、さすがにげんなりしてしまいます。

 

後日、大阪府庁から謝罪をいただき、納得しましたが、やはりもやもやは残ります。

 

ただでさえ、生活困窮者の支援は日の当たりづらい活動。行政のトップが自らボトルネックになっていては、活動はなかなか盛り上がりません。

 

コロナショックにより、生活困窮者の支援はより急務となっています。支援者の輪をどんどん広げていかないといけない。そのためには、大阪府と大阪市の二重行政は早く解消してほしいものです。

「行政」と「民間」…それぞれには強みがある

「行政」と「民間」。フットワークが軽いのは断然、民間のほうです。

 

我々は、夜間も土日祝日も電話転送しており、24時間365日対応可能です。行政でこの対応を行うのは難しいでしょう。

 

「民間のほうが優れている」といいたいわけではありません。行政でなければできないこともたくさんあります。

 

だからこそ、民間にももっと権限を委譲し、行政にできないことを民間に任せてほしい。そう考えています。

 

たとえば、行政の公的な発信では「この家の入居者がゆうべ、夜逃げしました」なんてことはいえないでしょう。しかし民間企業では、そのような実情をそのままの言葉で、ざっくばらんに話し合うことが可能です。

 

婉曲な表現がない分、問題点の発見も解決も早い。これも民間の利点です。どうか行政は「民間の強み」を頼り、活かす方向を考えてほしいと考えます。