「揚揚の立場になったら」オードリー・タンの母が心理を解説
揚揚は悩んだと思います。正直に話したら、これまで悪いことをした時のように、すごく怖い思いをするに違いない。だからわずかな可能性を胸に、この事件があなたに知らされないことを願ったのでしょう。揚揚の立場になって考えてみてください。あの夜を、どんな思いで乗り切ったのか。
親友を傷つけた。父や母からひどく𠮟られる。次の日学校に行けば、先生やクラスメイトの目もある。こんな状況は一年生の子どもにとって、あまりに負担が重すぎます。もし私なら、さらに子どもを叩くなんてできないと思います。
でもあなたは動揺を隠せない声で、「もし叩かなかったら、揚揚は非行に走るようになるでしょう?」と言いました。その瞬間、私は心の中に現れたありったけの神様に、揚揚とご両親をこの恐怖と不安から解放してほしいと願いました。
お母さん、そんな考えは捨ててください。子どもを叩いたって、悪いことをしなくなるわけではありません。
よく犯罪者の親がインタビューを受けて、頰を涙で濡ぬらしながら「小さい時、悪いことをしたらどうなるか、殴って教えてやったのに! 大人になってあんなことをするなんて……」と話すのをテレビで見るでしょう。一部の人は、こういう子どもの頃から「分からず屋」の人間は、生まれつきのワルなんだと言います。
でも、本当にそんな単純なものでしょうか?
私は犯罪の研究者ではありません。でも今まで出会った子どもたちの中に「生まれつきのワル」なんて一人もいませんでした。ただ不適切なしつけによって、強い失望や怒りを抱え、自分自身を見捨てた子どもがいただけです。
この子たちは、接する大人の方が心を入れ替えて、子どものありのままの姿を受け入れ、長所を見つけ、肯定し、自信をつける手助けをすれば、必ず心を開いてくれました。
それに、子どもが悪さをしない理由が、「何が悪いのかを理解したから」ではなく、「罰が怖いから」である場合、もう罰を受けないと分かったとたんに、本当に何の恐れもなく悪事に手を染める可能性だってあります。