オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ある日、校内で1年生がクラスメイトをケガさせる事件が起こりました。動揺する母に、李氏が語ったこととは…。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
「ひどい息子を育ててしまった」嘆く親にオードリー・タンの母が金言 ※画像はイメージです/PIXTA

「二度と棒で打ち合わなくなる」接し方とメカニズム

自分の恥ずかしいという気持ちや、子どもが非行に走るのではという不安はひとまず脇に置いて、揚揚の気持ちになってみてください。同じ立場で気持ちを理解し、話し合い、ショックを受けた心に寄り添い、埋め合わせをする方法を一緒に考えたら、あとは自然に任せるのです。

 

あなたが気づいた時には、揚揚は安全な遊び方について学び、学校があれこれ注意しなくても二度と棒で打ち合ったりしなくなっているでしょう。責任をもって事後処理を行うことも学んで、ケガをした友達のお見舞いやお世話をすれば、友情にひびが入ることもなく、両方にいい影響を与えます。

 

まず考えてみましょう。あなたは子どもに生きる上で必要な責任感を教えたいのか、それとも自分の怒りを発散したいのか。

 

前者なら、どうか先に自分の感情を整理して、それからお子さんと向き合ってください。後者なら、ただでさえ子どもも自分も落ち込んでいる時に、叩いて怒りをぶつけることで、より大きな罪悪感と苦しみを味わうほかありません。この方法は子どもの自我形成に悪影響を与える上、自分も他人も救われませんから、私は賛成できません。

 

子どもに責任感を学ばせるために「自然の流れ」や「論理的な結果」が利用できることを知らない親が多いのは、本当に残念なことです!

 

友達にケガをさせた揚揚は、辛い思いをしています。校則に反して棒で打ち合ったことは、学校が決めた対応に従えばいいのです。親がすべきことは子どもの心のケアとサポートであり、これは子どもを叩くことよりずっと大切なことだと思います。

 

あなたを悩ませ続けている食事の問題も、同じことです。子どもには食に対する自然な欲求があります。

 

ご飯を食べなければ、じきにお腹が減って、生理的欲求という自然の力があなたの代わりに揚揚を食事に向かわせます。もし時間通りに食事をしないと、論理的に考えれば、ご飯は他の人に食べられてしまい、自分の食べる分はなくなります。

 

食事の時間、テーブルでいつまでも騒いでいたら、まず「あなたのことは大好きだけど、食事に合った雰囲気というのも必要だよ」と伝え、家族みんなの意見を聞いて声を荒らげずに解決しましょう。すると子どもは不公平感や理不尽さを感じずに済み、自分の行動を変えようという気になります。こうやって「自分の行動に責任をもつ」ことを学んでいくのです。

 

でも気を付けてください。あなたが怒って、子どもの意見に耳を貸さない状態にある時は、やり方が合理的であっても、子どもは親から罰を受けていると感じ、納得しないものです。

 

私は、子どもがただ親の言いなりになるのではなく、自分で自分をコントロールするようになるには、これ以外に方法がないと思っています。そして、この方法は全ての「教育」に通じるものだと。あなたはどう思いますか?

 

 

李 雅卿(リー・ヤーチン)

種子学苑 創立者