オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。そんな特殊な学校で働く1人の教師の「発見」を聞いて、李氏が語ったことは…。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
天才オードリー・タンの母が深く同意した「教師の思わぬ発言」 ※画像はイメージです/PIXTA

幼い頃からの「大人との会話」で言語能力が向上?

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小さい頃から大人が積極的に子どもと話をすると、子どもの言語能力が向上することに気づきました。

私たちは子どもの学習環境を整えようと言いますよね。でも、子どもの話をよく聞いて、子どもとよく話をすれば、他のどんな取り組みよりずっと確実な成果が得られると思います!

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新学期前の準備の週になると、学苑の先生たちは学校全体のレイアウトを大きく変更します。キャビネットやロッカーを移動したり、机を動かして景色を変えたり、数日間の作業でみんな疲れ切ってしまいます。でも図書館の渡り廊下の前にあるラタンベンチに座って、すっかり様変わりしたキャンパスや教室を眺めながら、走り回る子どもたちの姿を想像すると、確かな喜びを感じずにはいられません。

                

「一つ気づいたことがあります」作業を終えた喜びにひたっていた私の耳に、突然あなたの声が聞こえました。「小さい頃から大人が積極的に子どもと話をすると、子どもの言語能力は向上します」。「というと?」私は尋ねました。

 

「私たちは子どもの学習環境を整えようと言いますよね。でも、子どもの話をよく聞いて、子どもとよく話をすれば、他のどんな取り組みよりずっと確実な成果が得られると思います!」

 

「その『子どもとよく話をする』って、どんな意味なの?」私は聞きました。

 

「日常生活の中で、子どもの興味のあることについて一緒に話すんです。子どもにあれをしろ、これを勉強しろ、と命令するだけじゃなく」あなたは考えながら話を続けます。「となると、貧しい家の子どもは、生活の中で親や他の大人と話す機会が多いから、心理的に冷遇されているお金持ちの子どもより言葉の発達が早いかもしれません。どう思いますか?」

 

あなたの穏やかでまっすぐな瞳を見つめながら、心の中で「たった半年でここまで!」と叫ばずにはいられませんでした。語文(言語・文学)の先生を始めてまだ半年なのに、ここまで深く観察し、これほどの気づきを得ていたとは、本当に嬉しく思います。

 

私は「同感だわ」と答えました。「親御さんが積極的に子どもと本を読んだり、意見を交わしたりして、言葉が文字に発展すれば、もっといいわね。子どもに優れた『文化的環境』を与えるとは、まさしくそういうことだと思うわ」