元経済産業省産業構造審議会・商品先物取引分科会委員でファイナンシャルプランナーの三次理加氏が執筆した『お米の先物市場活用法』(時事通信出版局)より一部を編集・抜粋し、商品先物取引で、入金した資金を超える損失が発生しない「損失限定取引」について解説します。
投資資金を超える損失が出ない…商品先物の「損失限定取引」とは (※写真はイメージです/PIXTA)

入金した資金を超える損失は「絶対に避けたい」人向けの取引方法

3.損失限定取引

 

「商品先物取引はしてみたいけれど、初心者だし、資金管理や建玉管理にまだ自信が持てない…」「入金した資金を超える損失は、絶対に避けたい…」

 

そのような方は、「損失限定取引」を検討しましょう。「損失限定取引」とは、「初期投資額を上回る損失が発生するおそれのない商品先物取引」です。原則として、「損失限定取引」における最大の損失額は、当初差し入れまたは預託した証拠金額を上回ることがありません。

 

「損失限定取引」では、取引開始時に、投資家と商品先物取引業者等との間で「ロスカット水準」と「ロスカット限度水準」の価格および証拠金額等について契約をしておきます。

 

言い換えれば、「これ以上の損失は出さない」水準で投資家と商品先物取引業者等が合意し、それに見合う証拠金額を差し入れまたは預託します。

 

仮に、保有する建玉が予想に反して不利な方向に動き、価格がロスカット水準に達した場合、それ以上の損失拡大を防ぐため、自動的に決済(=手仕舞い)注文が出されます。これをロスカット注文といいます。通常は、ロスカット注文が成立することにより、この取引は終了します。

 

しかし、たとえばストップ高、ストップ安をつけるなど、急激な相場変動等により売買注文が買いまたは売りの片側だけに集中し、「買えない(または売れない)」という事態に陥った場合には、ロスカット注文が成立しないこともあり得ます。

 

仮に、ロスカット注文が成立せずに値洗い損がさらに拡大し、ロスカット限度水準に達した場合、商品先物取引業者等は、商品取引所が定めるルールに則って、投資家の注文をロスカット限度水準で成立させ(=ストップロス取引)、取引を終了させます。

 

従って、損失額が当初差し入れまたは預託した証拠金額を上回ることはありません。ただし、委託手数料と委託手数料にかかる消費税については、この損失額に含まれません。そのため、取引結果によっては、取引終了時に、委託手数料と委託手数料にかかる消費税について入金しなければならないこともあり得ます。

 

ちなみに、ロスカット限度水準は、商品取引所が過去における値動き(ある約定値段から次の約定値段までにおける最大の価格差)を参照し基準となる変動率を定めます。商品先物取引業者等は、それ以上の額をロスカット限度水準として設定します。

 

そのため、ロスカット限度水準は商品ごと、商品先物取引業者等ごとに異なります。なお、「損失限定取引」の提供の有無や実際の運用方法は、商品取引所の規程および取引所のシステム対応状況、商品先物取引業者等により異なりますので、「損失限定取引」を希望する場合には、取引先の商品先物取引業者等にご確認ください。

 

 

三次理加

ファイナンシャルプランナー

<この連載の第1回記事はコチラから>