元経済産業省産業構造審議会・商品先物取引分科会委員でファイナンシャルプランナーの三次理加氏が執筆した『お米の先物市場活用法』(時事通信出版局)より一部を編集・抜粋し、商品先物取引を行う際に覚えておきたいルールについて解説します。
商品先物の仕組み…覚えておきたい「値洗い」と「証拠金」のルール

<この連載の第1回記事はコチラから>

覚えておきたい「値洗い」というルール

1.値洗い制度

 

商品先物取引では、保有する建玉の含み損益を毎日計算します。これを「値洗(ねあらい)」と呼びます。また、この計算上の含み損益を「値洗損益金通算額」といいます。

※取引所で成立した注文のうち未決済のもの

 

「値洗損益金通算額」は、約定(やくじょう)値段(=売買注文の成立値段)と帳入(ちょういれ)値段の差額に、取引倍率と取引枚数を乗じることにより算出します。プラスの算出額を「値洗い益」、マイナスを「値洗い損」といいます。

 

ちなみに、帳入値段とは、大阪堂島商品取引所の場合、1日の取引時間内に、ザラバ(=個別競争売買)で成立した約定値段と取引数量を加重平均することにより算出した値段のことです。帳入値段の算出方法は、商品取引所や銘柄により異なります。

 

たとえば「新潟コシを10枚買い」の注文が1万6000円で成立したと仮定します。その後、相場が上昇し、その日の帳入値段が1万6100円になったとします。この時、値洗損益金通算額は、2万5000円の値洗い益となります。

※商品先物取引での売買単位の事。新潟コシの1枚は25俵(=1500キログラム)

 

[1万6100円(帳入値段)-1万6000円(約定値段)]×25倍(取引倍率)×10枚=2万5000円(値洗損益金通算額)

 

翌営業日、相場が反落し帳入値段が1万5900円になると、値洗損益金通算額は、2万5000円の値洗い損となります。

 

[1万5900円(帳入値段)-1万6000円(約定値段)]×25倍(取引倍率)×10枚=▲2万5000円(値洗損益金通算額)

 

売りの場合は、逆に、約定値段から帳入値段を差し引いて計算します。たとえば「新潟コシを10枚売り」の注文が1万5900円で成立したと仮定します。その後、相場が上昇し、帳入値段が1万6000円になったとします。この時、値洗損益金通算額は、2万5000円の値洗い損となります。

 

[1万5900円(約定値段)-1万6000円(帳入値段)]×25倍(帳入値段)×10枚=▲2万5000円(値洗損益金通算額)

 

翌営業日、相場が反落し帳入値段が1万5800円になると、値洗損益金通算額は、2万5000円の値洗い益となります。

 

[1万5900円(約定値段)-1万5800円(帳入値段)]×25倍(取引倍率)×10枚=2万5000円(値洗損益金通算額)

 

また、その日の帳入値段で計算した結果、値洗い損となった場合に、取引を継続するためには、翌営業日正午までの商品先物取引業者が指定する日時までに当該金額を差し入れまたは預託する必要があります。

 

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