元経済産業省産業構造審議会・商品先物取引分科会委員でファイナンシャルプランナーの三次理加氏が執筆した『お米の先物市場活用法』(時事通信出版局)より一部を編集・抜粋し、お米の商品先物取引における価格決定要因について解説します。
日本の「お米市場」に悪影響を与える「小さな生き物」の正体 (※写真はイメージです/PIXTA)

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米の価格変動要因は「天気」と「スズメ」?

1.「天候相場」と「需給相場」

 

米は、日本全国で一年一作の農作物です。収穫期に大量に供給されたものを保管し、翌年の収穫期まで消費していきます。一般的に、収穫期は供給が増え、収穫前の端境期(はざかいき)は在庫が品薄になる傾向があります。従って、米の価格には季節性があります。

 

農産物の価格は、天候要因、需給要因、政策等に影響します。米も同様で、田植えから収穫までの「天候相場期」、収穫期以降の「需給相場期」に分けることができます。

 

「天候相場」期とは供給主導、「需給相場」期は需要(在庫)主導の相場といえます。一般的に、天候相場期は天候次第で一喜一憂するため、相場は荒っぽくなる傾向があります。

 

また、同じ米であっても、新穀限月と旧穀限月とでは、値動きが異なることもあります。ちなみに、新穀限月とは、新たに収穫された米を対象にした限月、旧穀とは、新穀より前に収穫された米を対象にした限月を意味します。

※先物取引において、先物の期限が満了する月

 

(1)天候相場

 

天候相場期は、供給(=生産)主導の相場であり、天候、作付面積、作柄が価格変動要因です。

 

米は、地域により異なりますが、4月頃に苗箱に種を植え、苗を育てます。その前、3月頃に農林水産省(以下、農水省)より「主食用米等の作付意向(2月末現在)」、3月上旬に「水稲の10a当たり平年収量(予想)」が発表されます。

 

5月くらいから田植えをし、稲を育成していきます。田植えの時期は、低温が収量の低下を招きます。5月下旬頃、農水省より「主食用米等の作付意向(4月末現在)」が発表されます。

 

7月頃には、農水省より「水稲の作柄表示地帯別10a当たり平年収量」「生産者の米穀在庫等調査(6月末見込み)」が発表されます。

※作柄表示地帯とは、水稲収穫量調査結果の提供及び利用のため、水稲の作柄を表示する区域として、都道府県の区域を水稲の生産力(地形、気象、栽培品種等)により分割したもの

 

8月頃から出穂(=さやから緑色の穂が出る)、開花(=穂に花が咲く)します。開花して1週間くらいが受粉期です。この時期の天候は、収穫量に大きく影響します。低温は収量減につながります。

 

また、夏場に日照時間が少なく、低温傾向だった場合、病害虫が発生しやすくなるため注意が必要です。病害虫については、毎月、農水省から発表される「病害虫発生予報」が参考になります。8月下旬には、農水省より「水稲の8月15日現在における作柄概況」が発表されます。

 

受粉後、1カ月ほどかけて花が硬い実(穂)になります。9月中旬頃、この穂が黄金色になり、葉が枯れてくると収穫期となります。この時期は病害虫のほか、スズメ等の鳥獣被害も心配されます。

 

9月下旬には、農水省より「水稲の作付面積及び9月15日現在における作柄概況」「水田における作付状況(9月15日現在)」が発表されます。10月頃から稲刈り、収穫期です。

 

10月下旬には、農水省より「水稲の作付面積及び予想収穫量(10月15日現在)」が発表されます。稲刈りの時期は、台風の時期と重なりますので、生産地に台風被害が出ることもあります。

 

米は、温暖な気候を好みますので、天候相場期は、病害虫被害のほか、特に長雨、冷害、収穫期の台風などに注意が必要です。

 

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