元経済産業省産業構造審議会・商品先物取引分科会委員でファイナンシャルプランナーの三次理加氏が執筆した『お米の先物市場活用法』(時事通信出版局)より一部を編集・抜粋し、商品先物取引で、入金した資金を超える損失が発生しない「損失限定取引」について解説します。
投資資金を超える損失が出ない…商品先物の「損失限定取引」とは (※写真はイメージです/PIXTA)

商品先物取引で大きな損失を被らない、「失敗しない方法」とは

商品先物の世界で、プロのファンドマネージャーやディーラー等が最も重視していることは何でしょう? それは、「資金管理」と「建玉管理」です。

 

1.資金管理

 

商品先物取引で失敗しないためには、資金管理が非常に重要です。そのためには、相場を客観的に捉える必要があります。相場の世界には「心動けば相場に曲がる」という格言があります。これは、動揺は損失につながる、という意味です。

 

たとえば、その資金を失ったら明日からの生活に困る、というのであれば、客観的になるのは難しいでしょう。相場を客観的に捉えるために大切なことは、まず「余裕資金で取引をする」ということです。

 

また、投資の世界では、チャンスの波は何度もやってきます。有名な投資家やファンドマネージャー、商社等が投資の世界で勝ちやすいのは、投資資金が潤沢にあることも要因の一つです。

 

「相場で損をしない」ということは誰であれ不可能です。たとえ損をしたとしても、何度でもチャレンジできるように余裕を持って資金を管理することが非常に大切です。1回の勝ち負けではなく「トータルで勝つ」という考えを持ちましょう。

 

加えて、常に総取引金額を意識するようにすることをお勧めします。商品先物取引のような証拠金取引を行う際、忘れてはいけないことは「損益は常に総取引金額に応じて発生する」ということです。

 

損失額が最大でいくらになるか、常に計算しておきましょう。たとえば、新潟コシを1万6000円/俵で1枚(=25俵)買う場合、総取引金額は40万円です(委託手数料等諸経費は考慮しないものとする)。相場が下落すれば、含み損が発生します。しかし、理論上、新潟コシの価格は0円/俵以下にはなりませんよね?

 

つまり、「買い」から取引を開始した場合、総取引金額が最大損失額といえます。一方、「売り」の場合には、取引の最大リスク額は総取引金額を超えることがありますので注意が必要です[図表1]。

 

[図表1]取引の最大リスク額
[図表1]取引の最大リスク額

 

ただし、米現物を売り渡す場合、この考えは不要です。筆者は、実際に出した証拠金の金額に気持ちがいってしまい、総取引金額を忘れてしまう人を多く見てきました。

 

「相場のカネと凧の糸は出し切るな」という相場格言があります。これは「相場とは全財産を投じてやるものではない、金の切れ目は運の切れ目。手元に余裕資金を残して臨むべきである」という意味です。

 

商品先物取引で失敗しないためには、自身の損失許容額を知り、総取引金額を意識しながら取引をすることが大切だといえます。

 

2.建玉管理

 

商品先物取引で失敗しないためには、建玉管理も非常に大切です。建玉(=ポジション)を持ちすぎない、ということを忘れないでください。

 

たとえば、投資家等の資金を運用するプロのファンドマネージャーは、限られた資金の範囲内で投資を行い、成果を出さねばなりません。そのため、資金や建玉の管理には、とても気を配っています。

 

商品先物取引で運用する際、彼らが投資資金の全額を使って取引することはまずありません。証拠金として使うのは資金の1割から2割程度です。資金のすべてを証拠金にあて、資金の上限まで取引することは避けましょう。

 

ちなみに、私は、商品先物取引初心者には、投資資金の1割以内に証拠金が収まるように計算し、建玉することをお勧めしています。

 

商品先物取引をはじめ、投資で「絶対に儲かる」方法はありません。しかし、大きな損失を被らない、「失敗しない方法」ならあるといえるでしょう。それは、徹底した自己管理にある、といっても過言ではありません。