商品は「相手のニーズに対する解決策」として提案
お客さまと営業マンの関係は、本来は対等なはずです。それなのになぜ、多くの営業マンが「お客さまは神様」とばかりに下手に出てしまうのかというと、実は売る側の姿勢に問題が潜んでいます。
営業マンが、「どうしても売りたい、なんとか買ってほしい」という姿勢でいると、お客さまとしては「そこまで売りたいというなら、まあ考えてあげてもいいけれど、もし買うなら私に何をしてくれるのか」といった発想になりがちです。そしてこの時点で、営業マンとの間に上下関係が築かれてしまいます。
お客さまにとっては、「あなたが売りたいものを買うのだから、私にもメリットがなければ嫌」と感じ、値引きであったり、特典であったりといった付加価値を求めるのです。ここで、営業マンの役割を、いま一度思い出してみてください。
「自社の商品やサービスを通じ、お客さまの悩みや課題、欲求を解消して、理想とする未来を提供する」このなかに、営業マンがお客さまに対し、とるべき姿勢の答えがあります。
商品やサービスは、あくまでお客さまの悩みや課題、欲求を解決するためのもの。お客さまの立場からすると、自分の困りごとを解消してくれる商品やサービスがあれば、「お金を払ってでも購入したい」と思うはずです。
つまり、営業マンは「売ること」自体を目的とせず、あくまで相手のニーズに対する解決策として、商品やサービスを提案するようにしなければいけません。
そしてそれを実行するには、自分がしゃべるより先に相手の話をしっかりと聞き、ニーズを引き出す必要があります。
それができれば、お客さまと営業マンの立場は自然に対等となり、値引きや特典などがなくとも、契約につながるでしょう。
相手の理解度を確認しながら商談を進める
商品説明に多くの時間を割き、自分の思いばかりを「しゃべりすぎる」営業マンは、相手の反応に気を回せないもの。
営業マンにとっては、毎日のように話をし、隅から隅まで知っている商品知識も、お客さまの立場で考えれば、初めて聞く単語や理解できない要素が当然あります。
お客さまが置いてきぼりになっているのも分からず、話したいことだけ話して、「どうでしょう、契約いただけますか」と迫っても、まずお客さまは首を縦にはふりません。
営業マンの話に対する理解度は、お客さまごとに違います。保険営業でいうなら、証券会社に勤めており保険についての知識がある人と、菓子メーカー勤めでそれまで保険に興味がなかった人では、当然理解度が異なるわけです。
したがって、商談の最中には、常にお客さまの反応に気を配り、自分の話が齟齬(そご)なく伝わっているかを見極めながら、話を進めていく必要があります。
ここで、相手がついてきてくれるかどうかを確認するのに、私がいつも使っているフレーズを一つ紹介しましょう。
「ここまで、よろしいでしょうか?」
この一言を、切りのいいタイミングで挟んでいくことで、お客さまの理解度をより推し量りやすくなります。
「ここまで、よろしいでしょうか」に対し、お客さまが「ちょっと分からないので、ここの説明をもう一度……」と返してくれるような場合はもちろん、その説明をすれば大丈夫です。
たとえ言葉が返ってこなかったとしても、大きくうなずいていれば理解してもらっているでしょうし、不安げであったり、首を傾げていたりすれば、分からないところがあるはずです。
「どこか分かりづらいところがありましたか、遠慮なくおっしゃってください」と水を向ければ、きっと答えてくれるでしょう。