※画像はイメージです/PIXTA

親の面倒を見ている兄弟は、親の財産の消費や相続で「やりたい放題」になりがちです。実際に「争族」へ発展してしまったエピソードをご紹介します。※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会の書籍 『プロが教える  相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

「通帳、どこいった?」億を超える現預金の行方は…

「お母さんは昔からアクティブな人で、お父さんが亡くなった後も一人で海外旅行へ行ったりしていました。日常生活も問題なかったと思います。それでも、やっぱり80歳を過ぎてからは自分の言ったことをすぐ忘れてしまうようになって……

 

周りが振り回されることもありましたね。財産はぜんぶ春美にあげると口走ったと思うと、次の日には3人で財産を均等に分けてねと言い出す始末でした。日によって言うことがぜんぜん違うんです。それでも、孫たちには毎年110万円ずつの暦年贈与(※)を忘れずにしてくれたんです。やさしいお母さんでした……」

 

お母さまのことを思い出して奈津美さんは少し涙ぐみました。そんなお母さまが91歳で大往生を遂げたことで「争族」が起きてしまったのです――。

 

(※)「暦年贈与」とは、暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与を行い、その贈与額が年間110万円以下であれば贈与税がかからない制度のことです。連年贈与とみなされることもありますので、専門家にご相談ください。

 

■毎月70万以上の現金が消えていたが証拠はないとつっぱねる長女

 

母親の四十九日を終えた後、3姉妹は悲しみに暮れながら、母親の暮らした実家を片付けはじめた。このとき、けっきょく遺言らしきものは見つからなかった。

 

地元ではそれなりの会社を経営してきた一族なので、次女の奈津美と三女の秋絵は、基礎控除の4800万円(3000万円+600万円×3人)を優に超える財産が残っていると考えていた。なぜなら、一次相続(父の死亡時)で母が億を超える現預金を相続したことを姉妹は知っていたからだ。

 

ところが、母の財産をいくら調べても自宅以外の目立った遺産は見つからない。不審に感じた奈津美と秋絵は、父の会社の会計を見てもらっていた税理士に相談を持ちかけた。税理士から、とにかく預金通帳を探すように指示されたふたりは、実家を隅から隅まで探しまった。しかし預金通帳はどこにもない。

 

「いくらなんでも通帳がない、なんてことある?」

 

秋絵は奈津美に問いかける。

 

「年金の振り込み用口座だって必要なんだから、通帳がないわけないでしょ」

 

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