元経済産業省産業構造審議会・商品先物取引分科会委員でファイナンシャルプランナーの三次理加氏が執筆した『お米の先物市場活用法』(時事通信出版局)より一部を編集・抜粋し、お米の商品先物取引における価格決定要因について解説します。
日本の「お米市場」に悪影響を与える「小さな生き物」の正体 (※写真はイメージです/PIXTA)

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主食に変化が?「日本の米政策」について

2.国の政策等

 

政府は、適正在庫水準を毎年6月末時点で100万トン程度として、政府備蓄米を保有しています[図表1]。これは、10年に1度の不作にも備えられる量とのことです。

 

備蓄米の買い入れは、毎年20万トンずつを5年かけて、原則として、2月から6月頃までに分けて行います。また、水稲うるち玄米の1等比率の検査は通年で行われ、毎月、農水省より「米の農産物検査結果」が公表されています。

 

なお、農水省は、毎年3月下旬、7月下旬、11月下旬に「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」を発表しています。これには、政府の基本方針のほか、需要実績、需給見通し、政府備蓄、米の輸入に関する状況や方針が掲載されます。

 

需給に始まり需給に終わる商品の世界には、「相場は、需給に始まり需給に終わる」という言葉があります。これは、モノの価格は、需要と供給のバランスで決まる、ということを表した言葉です。

 

需要とは「いくらで」「どの数量」買いたいか、ということであり、供給とは「いくらで」「どの数量」売りたいか、ということです。つまり、需要と供給のバランスを決める要素は「価格」と「数量」です。

 

供給側は、価格が上昇すればより多くの商品を市場に供給し売り上げを伸ばそうとします。逆に価格が下落すれば、供給量を減らして価格維持を図るでしょう。需要側は、価格が上昇すれば購入を手控えます。

 

逆に価格が下落すればより多く購入しようとするかもしれません。この需要側と供給側の数量が一致する均衡点が「その商品の価格」です。逆にいえば「需要と供給の関係は、価格によって調整される」といえます。

 

これは、筆者の個人的な受け止め方ではありますが、現在の日本の米政策について、政府は、一定水準以上の価格維持を図っているように思えます。

 

もちろん、米は日本の主食ですから、その生産者を保護することは非常に大切なことです。しかし、国産米と輸入米の価格差は2.5~4倍程度あります。消費者の立場から見れば、高い米を買わされていることになります。食生活が欧米化傾向にある現代において、食卓の主役がいつまでも米であり続けるとは限りません。

 

また、日本は、すでに人口が減少傾向にあります。一般的には、人口が減少すれば、需要も減少します。そのような環境下で政府が価格維持政策を継続するのであれば、需要と供給の関係から、需要の減少速度をさらに早めることになるのではないかと、少し心配してしまいます。

 

 

三次理加

ファイナンシャルプランナー

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