「毒親」という言葉が世間に浸透したことで、多くの人が強い関心や危機感を覚えるようになりました。とはいえ「毒親」を持つ当事者からすると、親をそう簡単には切り捨てることはできないケースが多いものです。今回は、弁護士の齋藤健博氏が、相談者から寄せられた「毒親」に関する質問に答えていきます。

多くの人が強い関心を寄せている「毒親」問題

最近、毒親に悩まされている方の発言を目にすることが増えました。

 

毒親とは、スーザン・フォワードの著書『毒になる親 一生苦しむ子ども』から世のなかに広がったとされている言葉。具体的な行動としては、過干渉、支配、価値観の押し付け、過度なお金の要求などがあげられています。

 

毒親は芸能人の方の親にも多いようです。最近では、お笑い芸人・ナインティナインの矢部さんが、実の両親がたびたびお金を貸してくれと連絡され、断ると「誰がお前をそこまで育てたのか」と逆ギレされたことを明かしていました。

 

今回は、同じように毒親をもつ方からの質問に対して、回答させていただきます。

 

「毒親」を持つ子の悩み(画像はイメージです/PIXTA)
「毒親」を持つ子の悩み(画像はイメージです/PIXTA)

相談①:毒親と親子の縁を切るためには?

いつもお金をせがんでくる、何かと要求をしてくる私の親、いわゆる毒親です。お金をせがんでくる理由も、親自身のギャンブルなどによる借金返済のためなどです。私の親のせいで妻も精神的に参ってしまい、親子の縁を切ってしまいたいと考えています。親子の縁を切るためにはどうすればいいのでしょうか?

 

【回答】
法的に、実は親子の縁を切ることはできません。冒頭から残念なことを言うようですが、血のつながった親と完全な断絶をすることを、法律、民法が想定していないのです。ではどうすればいいのかというと、基本的に財産的な面が主な合意事項となると思いますが、いったん整理して今後依存関係は生じないこと、これに付随する範囲で細かい取り決めなどをすることがあります。公正証書にすることも視野に貼ります。

質問②:親への「養育費の返済義務」はあるのか?

以前、自分の親に縁を切ることをほのめかすと「あなたを育てたお金を返せ」という風に反論されたこともありました。学費や諸費など、養育費の返済義務はあるのでしょうか?

 

【回答】
明確にありません。よく喧嘩の延長で、「今まであなたを育ててあげたのだから、その分のお金を返しなさい」と言い合いになることがありますが、そもそも、親には子どもを扶養する義務があるのです。その義務を実践することで質問者さんに使用されたお金は、さかのぼって請求することはできません。親は、身上監護権・財産管理権などの権利に基づきあなたを扶養していたことになります。

 

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