70歳になると、医療費や介護費の負担が増えてくる
70歳になると、仕事をしている人はほとんどいなくなります。多くの人が65歳からもらう年金収入をあてにした生活になります。体調も思ったほど悪くないため、高齢者という言葉にまだ慣れない年齢かもしれません。
ただ、これから一気に医療費と介護費がかかる嵐の前の静けさにすぎません。健康が失われると、お金も一気に失われるのです。
生活費が予定よりオーバーしていないか。増えるはずだった投資信託の残高を見るのが怖くなってはいないか。今まで家計を振り返ってこなかった人は、必ずこの時点で資産保有額をしっかりと把握しなくてはいけません。赤字家計を続けて、預貯金をどんどん取り崩し、気づいたら残高が100万円を切っている……。そんなことになってしまうと、生活保護に陥りかねません。
では、70歳以上の高齢者はおよそどれくらいの資産を持っているのでしょうか。調査結果によれば、70歳以上の平均資産保有額は1314万円です(2人以上世帯)。あくまでも平均値になりますので、この中には富裕層も含まれています。実際、中央値の資産額は460万円しかありません。中央値とは「数値を小さい順に並べた時に、真ん中にくる値」のことで、今回の場合「資産額が460万円の家庭がボリュームゾーン」だとイメージしてもらってOKです。
しかも、この金額は現金預金だけではなく、有価証券や保険も入っているので、すぐに使えるお金はもっと少なくなってしまいます。
気を付けなくてはいけないのが、定期預金や、投資信託、積み立て型の保険など、すぐには使えない財産である「半凍結資産」の存在です。普通預金であれば、キャッシュカードがあればすぐにおろして利用することができます。
一方、半凍結資産は、解約や売却など手続きを幾つか踏むことではじめて利用することができるもの。さらにネックになるのが、投資信託は投資した当時より資産が目減りしている、保険は今解約すると損をする、定期預金であればあと何年経たないと利子がつかないというのもあり得ることです。
総務省「2019年家計調査報告(家計収支編)」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の可処分所得は約21万円。一方で支出は約24万円になっているので、普通に生活していくだけでも毎月3万円、年間36万円の赤字。資産が仮に現金で460万円あったとしても、およそ12年程度で資産は枯渇します。
少しでもゆとりのある老後生活を送ろうとすると、毎月36万円の生活費が必要だといわれています。こうなると赤字額は毎月15万円にまで増大。3年も待たずに老後資金は枯渇します。
これだけの赤字を出す生活を送る人はなかなかいませんが、病気や介護が必要になった時には、毎月の赤字額が10万円以上になることは珍しくありません。そうなると、たとえ70歳時点で1000万円の現金があったとしても、10年も持たないのです。
生活費補填のために「自宅売却」や「アルバイト」は?
「いや、自宅を売れば大丈夫!」と思っている人もいるかもしれません。自宅を売却して、コンパクトな家に移り住むという選択肢です。
残念ながらこれも簡単ではありません。あなたの家を売り出した場合、いったいいくらになるでしょうか。もしあなたが30歳の時に購入した戸建てであれば、築40年です。
建物の価値はほぼありません。売却価格は、ほぼ土地の価格となります。あなたが住んでいる所が「住みたい街」として人気がなければ、土地の価格も下がっている可能性が高いのです。
自宅を売却できたとしても、住む場所がありません。自分の子どもが住んでいるところに同居すれば問題は解決します。しかし、世の中の家族関係は複雑化しており、子どもの配偶者が喜んで同居に賛成してくれるとは思えません。
70歳を超えると雇ってもらえる職場は限られ、仮に働き口が見つかったとしても給料はあまり期待できる数字ではありません。赤字分を月々10万円のアルバイト収入で賄うことも考えられます。時給が1000円だとすると、毎日5時間×20日間で達成できます。
数字だけ見れば達成はそんなに難しくないようにも思えそうですが、心身ともに健康という条件がついてきます。また、70歳は老化が確実に進んでいて、現役時代とは比べものにならないくらいパフォーマンスが落ちています。働いて赤字分をすべて補うという選択肢は、現実的には難しいでしょう。だからこそこのタイミングで、資産の棚卸をする必要があります。
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