要件をクリアして確実な事業承継を実現
中小企業経営円滑化法の特例は、確実に事業承継が行われ、承継された会社が発展することを前提に創設された制度です。このため、制度内のメリットを利用するためには、事前申請から認定、実際の事業承継の状況まで、随時チェックが入るため、制度として使いにくいという意見があるのは確かです。
ただ、オーナー社長と後継者が協力して確実に事業承継を行い、株式を継続して保有する“強い意志”があれば、いわれているほど使いにくい制度とは思いません。逆に、要件をクリアすることで、会社の事業承継を確実に遂行できるようになる、という考え方もできると思います。
株式を保有し続ければ納税猶予は継続
中小企業経営承継円滑化法が定める贈与税の納税猶予には、認定後の要件も定められています。承継後は最低5年の事業継続が必要です。具体的内容は次の通りです。
●後継者が認定を受けた会社の代表者であること
●雇用の8割以上(厚生年金保険および健康保険加入者である従業員数)を維持すること
●贈与を受けた対象株式を保有し続けていること
●合併や株式交換等により組織再編した場合でも、実質的な事業継続が認められ一定の要 件を満たしている場合は認定継続となる
また、事業継続期間中は、各機関に対し次の事業継続に関する報告義務があります。
●毎年1回、贈与税の申告期限から1年経過するごとの日である報告基準日の翌日から3カ 月以内に、経済産業局に報告書を提出する
●事業継続期間中は毎年1回、期間経過後は3年に1回税務署に「継続届出書」を提出する
贈与税の納税猶予を受けて承継した会社が、引き続き自社株式を継続して保有している限り、相続税の納税猶予は継続されます。
ただし、納税猶予はあくまでも猶予で免除ではありません。要件を満たさなくなれば納税することになり、それまでの期間の利子税が加算されますので、しっかりした継続の意志が求められます。