納税猶予の活用は強い意思を持って突き進む
経済をめぐる環境はここ数年を振り返っただけでも、めまぐるしく変動しています。好調な業績を続けていた会社が突然、次の四半期から赤字に転落し続けても、今ではあまり驚かなくなりました。
「そんな事業環境のなかで、果たして事業を継続できるのか?」
「自社株式を永遠に持ち続けることができるのか?」。
オーナー社長の皆さんは、心のどこかにこんな不安があるのではないでしょうか。
「納税猶予は走り出したら止まれない」――。一度でも止まれば、納税猶予分の税金が利子税とともにたちまち降りかかってきます。事業承継を決めて納税猶予を活用すると決めたら、とにかく強い意志をもって突き進む。強い意志を持続すれば、納税猶予の制度は事業承継にとって力強いサポーターになってくれるはずです。
贈与税から相続税へ納税猶予を切り替える
相続税の納税猶予を引き続き使う際の流れは、まず先代経営者(贈与者)が亡くなったとき、後継者(受贈者)はそれまで猶予されていた贈与税の納付が「免除」されます。そして、承継した株式は、後継者が相続あるいは遺贈で取得したものと見なし、「贈与時の価額によって」他の相続財産と合算して相続税を算定します。
このときに「経済産業大臣の認定」を受けて一定の要件を満たせば、いったんは贈与税の課税対象になっていた承継株を、今度は相続税の納税猶予の対象にすることができます。
贈与税から相続税の納税猶予に切り替える際に、経済産業大臣の確認を受けるための用件には、以下のような項目があります。
(1)相続の始まるときに、会社が以下の要件を満たしている必要がある。
・中小企業基本法に定められた中小企業であること
・上場会社ではないこと
・資産管理会社ではないこと
・従業員数が1名以上いること
(2)後継者が次の要件を満たしている必要がある。
・相続開始の直前に先代経営者の親族であったこと
・相続開始時に後継者が、同族関係者との間で50%超の株式を保有し、しかも筆頭株主であること
(3)確認の申請は、相続開始日の翌日から8カ月以内に所定の申請書を経済産業局へ提出する。
(4)経済産業局で確認を受けた際に交付される「確認書」を、他の必要書類とともに添付し、管轄の税務署宛に提出する。
これで、相続税の納付猶予の適用を受けることができるようになります。