目まぐるしく変化する現代社会において、複雑な問題解決をひとりで行うのは困難です。ビジネスで成果を上げるには「チームワーク」が不可欠ですが、では、どうやってチームを作ればいいのでしょうか? 16万人のコンサルティングとAI分析結果から判明した、自己管理・コミュニケーションスキームを解説します。※本記事は、越川慎司氏の著書『巻込力』(経済法令研究会)から一部抜粋・再編集したものです。

優秀な若手社員は、チーム力で成果を残している

あなたは、他部署の人と、一日にどれだけ話しをしていますか。

 

多くの場合、巻込力のある人はチームで大きな成果を残し、社内外の表彰を受賞しています。623社以上の企業コンサルティングを行う中で、社長表彰を受賞する社員の傾向が変わってきたことを私は感じました。例えば、精密機器メーカーに新卒で入社し、入社2年目から5年連続で社長表彰を受賞した若手社員がいます。彼の次のような言葉が時代の変化を物語っています。

 

「3年ぐらい前は多くのメンバーを巻き込めば顧客の課題を解決できました。しかし、最近では複雑化した顧客のニーズを満たすために、多くの部門を巻き込んでいかないと、大きな成果を上げることができません。」

 

わずか3年で外部環境が変化し、その課題解決の仕方が変わっているということです。社外の変化に敏感に反応し、それに合わせてしなやかに行動を変えられる人だけが成果を出し続けられるのです。

 

自分が成長するためには、長所を伸ばすか、短所を克服するかのどちらかです。短所の克服は大きな効果に繋がるかもしれませんが、ストレスを伴い時間がかかります。

 

そこで、他者の能力(長所)を借りることで補完し、自分の長所を伸ばすことに注力するのです。長所を発揮するとテンションが上がり、さらに能力を伸ばそうとするモチベーションが湧きますから長続きします。この長所を他者に提供することで、自分の短所を賄うことができれば、最短距離で成果を残すことができるのです。

 

 

自分の短所と他者の長所を知るためには、メンター制度を積極的に活用することです。メンター制度は日本企業でも徐々に浸透してきました。メンター制度とは、上司・部下の関係ではなく、年次の近い先輩社員や、他の組織のリーダーなどに相談や助言を依頼するサポート制度です。助言をする側がメンター、助言を受けるのがメンティーです。

 

私は、前職のマイクロソフトでは最大18名のメンティーを抱えていました。多くが新卒入社で1年目から3年目の若手社員です。私はメンバーに恵まれて役員となり、大きな売り上げを担う事業部を任されていましたので、周囲のメンバーに対するお礼の意味も含めて、メンティーを希望する後輩社員の依頼は断らないようにしていました。

 

ただし、これは単なるボランティアでやっていたことではありません。完全ジョブ型のグローバル企業であるマイクロソフトは、役員であったらなおさら成果を残さないと会社に居続けることができません。成果を残さなければプロセスをアピールしたり、ボランティアによって人助けをしたりしても評価されないのです。

 

そんな中で私は、メンター制度によって私にとって異質の存在であった若手社員との接点を作ることで、次のように自分を磨き、成長させていました。

 

 ①傾聴力(アクティブリスニング)を磨く 

●若手の意見をじっくりと、時に我慢して聞く

 

 ②部下の育て方を磨く 

●ティーチングからコーチングへの切り替えタイミングを意識する

●相手の行動を誘発する適切なフィードバックをする

 

 ③巻込力を磨く 

●同情ではなく共感によって一緒に考え抜く環境を作る

 

また、仕事柄、人前で話すこと(講演、プレゼンテーション)が多かった当時の私にとっては、メンターの活動はインプットの場面でもプラスに働きました。

 

 ④自分の短所を知る 

●バイアスがかかってない若手からの率直な提案

→ 固定観念や思い込みから他者の情報を拒むこと、売り上げ目標を達成するために視点が短期的になることがある自分を知る

 

 ⑤自分の知らない新しい情報を知る 

●バイアスがかかってない若手からの率直な提案

→ 読書などでは得られない若手目線の貴重な情報を知る

 

このようにアドバイスをする側と受ける側、インプットする側とアウトプットする側を、メンター・メンティーの関係性の中で繰り返していけば両者が成長できます。それは、お互いが「異質」の存在だからです。こういった異質のかかわりによって化学反応が起き、思いもよらなかった助言を得ることができるのです。

 

 

短所をがむしゃらに克服しようとして、ひとりで何でも頑張り抜こうとしなくていいのです。こうした異質との接点を維持していけば、自分を見失うことなく自分を高めていくことができます。

 

現代では、顧客の欲求は止まらずに進化し続け、悩みを解決するソリューションだけでは満足しなくなっています。私の会社でもこの3年間で19件の新規ビジネスを立ち上げましたが、痛みや悩みを取るソリューションだけでは顧客がお金を払ってくれないことを実感しています。また、顧客が悩みや課題を感じていないケースも多くなりました。

 

モノと情報が溢れる中で、容易に欲求を満たすことができ、「今で十分」という満足感を得ているのです。そうなると、ニーズを自分たちで作り、まだ見えていない潜在的な欲求を見つけ出して満たしていく必要があります。ソリューションは価格争いになり、利益率が下がっていきますので、永続的に利益を出し続けることが求められる民間企業ではイノベーションを起こさないといけません。

 

こういったニーズを「見つける」、「作り出す」、そしてその「解決策をすぐに提供する」時代では、求められるものが変わってきます。同質ではではなく異質同士の発想、個ではなく組織(チーム)の力でスピード感のある実現力が求められるのです。このような背景では、会社内で評価されることが変わっていきます。言われたことを実直に行動する社員ではなく、自律的に動き、他者を巻き込んで動かす社員が評価されます。

 

実際にクライアント各社で優秀な若手社員は、「個」の力もさることながら、チーム力で成果を残しています。卓越したコミュニケーション力でメンバーを説得し、自分にはない能力を借りて、課題解決に役立てています。

 

 

自分にないものを積極的に探し、受け入れ、それを次の行動に活かす型は、米国シリコンバレーで多くのイノベーションを生んだ「デザイン思考」と似ています。アイデアの質ではなく、量を重視してブレインストーミング(発散)を行い、仮説を元に試作品(プロトタイプ)を作ってターゲット顧客層にフィードバックをもらい、作り直していくことでアイデアを具現化していくのです。

 

 

決して自分ひとりの能力だけでなんとかしようと考えないでください。相乗効果を出すには、自分にはない能力を持った異質のメンバーを結集した方がいいのです。

 

そのためには、抵抗勢力と折り合いをつけることができるコミュニケーション力、勇気を持って新しいことを進め、成果を出し続ける実現力を持つ人材となる必要があります。

 

 Action 

異なるバックグラウンドを持つ人と、積極的にかかわる

 

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越川 慎司
株式会社クロスリバー
代表取締役社長 CEO/アグリゲーター

 

 

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巻込力

巻込力

越川 慎司

経済法令研究会

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