中学受験で出題されやすい「江戸時代」の歴史。どのような政治がおこなわれていたか、正しく理解していますか? ここでは、江戸時代中期・後期に行われた幕政改革を中学受験レベルで解説します。※本連載は中学受験専門塾ジーニアス運営会社代表・松本亘正氏の著書『中学受験「だから、そうなのか!」とガツンとわかる合格する歴史の授業 下巻(江戸~昭和時代)』(実務教育出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

三大改革の1つ…徳川吉宗による厳しい「享保の改革」

1716年に8代将軍(しょうぐん)となった徳川吉宗(よしむね)は、紀州藩(きしゅうはん〔和歌山県〕)出身です。吉宗はさまざまな改革を実行しました。1つずつ見ていきましょう。

 

[図表2]享保の改革を行った徳川吉宗

 

まずは、米不足を補うため、大名(だいみょう)に石高(こくだか)1万石に対して100石の米を納めさせるという上米の制(あげまいのせい)

 

10000のうちの100だから、大した量じゃないと思うかもしれませんね。みなさんのお年玉10000円につき100円を親に納めるくらいの感じなら、9900円は手もとに残ることになります。

 

でも、大名は広い土地を支配していますから、かなりの量の米を納めなければなりません。

 

この上米の制は幕府にとって危険なものでした。大名は幕府に対して不満を持っていました。武家諸法度(ぶけしょはっと)によって行動は制限されるし、参勤交代(さんきんこうたい)で江戸と領地を往復しなければならない。しかも、幕府はそれに逆らった大名の領地を没収したり、別の領地に移動させたりしていたのです。

 

みなさんがお年玉10000円から100円取られて親に反発しても、「はいはい、だまっていなさい」と言われるのがオチだけど、大名は幕府に反抗するかもしれません。たまっていた不満が吹き出す可能性もあるからです。

 

そこで幕府は、大名に石高1万石に対して100石の米を納めさせる代わりに、参勤交代で江戸にいる期間を半分の半年としました。そうやって、不満を解消しようとしたのです。

 

次に、新田開発(しんでんかいはつ)。今までもやっていますが、吉宗はどう工夫したのかというと、町人に新田開発をさせ、その代わりに利益を町人にも分配するという方法を取りました。

 

他には、目安箱(めやすばこ)の設置。私が小学校のときにはありましたが、みなさんの学校にも「意見箱」がないでしょうか。何か困ったこととか、先生に知らせたいことを書くわけです。だいたいこういうのを設置すると、「バカ」と書いたり悪ふざけしたりする人が出てくるものです。

 

目安箱で「しょーぐん、ばか」と書いた人がいるのかどうかわからないけれど、名前を書いていない投書は捨てられたそうです。ちゃんと住所・氏名を書いたものだけが取り上げられました。

 

イラスト:遠藤庸子(silas consulting)
庶民の進言を集めた目安箱 イラスト:遠藤庸子(silas consulting)

 

この目安箱によって、小石川療養所(こいしかわりょうようじょ)が設置されました。無料で庶民の病気の治療をする、いわば病院です。

 

町火消(まちびけし)もつくられました。江戸は参勤交代で大名やその部下が住み、政治の中心地でもあったので、たくさんの人が密集して住んでいました。木造建築のため、火事が多かったんですね。

 

徳川吉宗は、他にも公事型御定書(くじがたおさだめがき)という裁判の基準となる法律を定めたり、キリスト教に関係ない洋書の輸入を許可したりして、蘭学(らんがく)が発達するきっかけをつくりました。

 

ちなみに、蘭学の「蘭」はオランダのことです。オランダを通じて入ってきたヨーロッパの学問・文化・技術のことを蘭学と言いました。このとき、ききんに備えて青木昆陽(あおきこんよう)にさつまいもの研究を命じたように、農業など実際の生活に役立つ本は輸入が許可されましたが、人権に関する思想は入ってこなかったそうです。なぜでしょう? 考えてみてください。

 

イラスト:遠藤庸子(silas consulting)
吉宗にききん対策でさつまいも研究を命じられた青木昆陽 イラスト:遠藤庸子(silas consulting)

 

今まで習ったことを使って答えられますね。平等を唱えるキリスト教の思想が入ってこないようにするため、ということです(前回の記事『中学入試頻出の問題…江戸時代、日本が鎖国した理由を答えよ』で解説。関連記事参照)。

 

もしくは、「またか」と思われるかもしれませんが、士農工商の身分制度をとっている幕府にとって都合が悪い考え方が入ってこないように、というわけです。

 

さて、徳川吉宗の一連の改革を、享保(きょうほう)の改革と言います。全体的にはうまくいきましたが、年貢(ねんぐ)を四公六民(しこうろくみん)から五公五民(ごこうごみん)に引き上げることによって一揆(いっき)が起こるなど、安定して政治が行えたわけではありませんでした。

 

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