企業出版では、書籍を作ることはあくまでも「手段」
「企業出版」は、まず通常の商業出版とは異なります。商業出版は、出版社が制作費を負担する出版形式です。出版社が企画を立て、著者にお金を支払って執筆してもらうのが基本です。一方、企業出版は、書き手である著者(企業)が事業投資としてお金を出して、書籍を作ります。
そこで企業出版を検討している経営者からよく尋ねられるのが、「自費出版」との違いです。企業出版という言葉は一般になじみが薄いので、それは仕方のないことだと思います。企業経営者からすれば「自分たちでお金を払って本を作るのだから、自費出版と一緒でしょう」ということになります。
しかし、企業出版と自費出版は似て非なるもので、実はまったく異なる出版手法です。では、企業出版と自費出版の違いはどこにあるのか。大きくは2点あります。
まず、自費出版は書籍を作ること自体を目的としているのに対して、企業出版は書籍を作ることは目的ではなく、手段であるという点です。
ご存じのように、自費出版というのは昔からある出版スタイルです。いまも一定のマーケットが存在し、多くの出版社や印刷会社が参入しています。自費出版では、個人の自叙伝や戦争体験記、闘病記、小説、エッセイ、詩集、写真集などを自分でお金を出してつくります。自分の表現欲求を満たしたい人が自費を投じて出版する。自分の書籍をつくることが目的となっています。
一方、企業出版は、企業のブランディングのためにプロモーションの一環として出すもので、企業のマーケティングや広告的なツールとして書籍を活用します。書籍をつくるのは「目的」ではなく「手段」なのです。
自分が費用を出して書籍をつくることに対して、否定的な見方をする人は少なくありません。書籍は高尚で文化的なもの、プロの作家や学者、専門家だけが出すものという認識もあります。ですから企業経営者の中には、お金を出して書籍を作ることに抵抗感がある方も一部にいらっしゃいます。自己満足のために書籍を作るのはイヤだという方もいるでしょう。
しかし、先ほど述べたように、こうした認識は旧来の自費出版に対するものといえます。ですから私たちは「書籍を作りませんか?」という提案はしません。「貴社がいま抱えている課題は何ですか?」という質問から入り、そのうえで企業出版は自費出版と異なること、自叙伝を作るわけではないこと、そして企業の課題解決のために書籍を活用するものであるということを明確にお伝えします。
書店への「流通」はゴールではなくスタート
企業出版と自費出版の違いの2つ目は、書店流通に対する考え方です。もちろん、自費出版であっても一般の書店に流通する書籍はありますが、基本的には書籍が完成することがゴールで、できあがった本を家族や親族、身近な人たち、また企業経営者であれば社員や取引先などに配ることが目的になります。つまり印刷・製本によって基本的に完結するものです。
それに対して、企業出版は印刷・製本してからが始まりになります。書籍が書店に並ぶ流通がゴールではなく、流通がスタートなのです。この流通の具体的な内容は次回以降に詳しくご紹介しますが、弊社の場合、出版の2ヵ月前にはプロモーション部や流通管理部という部署がプロジェクトに加わります。クライアントによって事業が異なりますし、商圏も違いますから、全国のどういう地域に重点的に配本するか、新聞広告はどうするかなどを俯瞰して出口戦略を構築していきます。
プロモーション部はパブリシティ戦略も練ります。新聞や雑誌、テレビ、ウェブ等、どういう媒体に取り上げてもらうと効果的かなど、地味ではありますが、より多くの読者に本を知ってもらうための活動を展開します。
企業の「伝えたい」想いを読者の「知りたい」に変換
したがって、クライアントに本を出してよかったと感謝していただけるのは、出版後早くて1ヵ月後、多くの場合は2~3ヵ月後に効果が現れてからになります。自費出版のように書籍が完成した時点で、「おめでとうございます」というふうには終わらないのです。
企業出版は自己顕示欲を満たすためのものではありません。企業経営者の中には、自分の出したい内容の本を作ってほしいという方もいます。立身出世物語などが典型例です。そうした書籍を出すことが企業の課題解決につながる場合は制作することもありますが、基本的には異なる切り口を提案することが多くなります。
ミリオンセラー、ベストセラーを生み出す幻冬舎独自の出版ノウハウをクライアント企業に当てはめることによって、企業の「伝えたい」想いを読者の「知りたい」内容に変換します。読者が本当に知りたい「そんな話があるのか!」という感動の輪を広げていくことが企業出版の王道に他なりません。