「社長の教祖」と異名を持つ一倉定氏は経営者をよく叱った。叱られるたびに多くの経営者は目を輝かせた。社長の教祖は「世の中に、良い会社とか悪い会社なんてない。あるのは良い社長か悪い社長だけである。会社は社長次第でどうにでもなるんだ」と断言したという。なぜ、令和の時代に「一倉定」が注目されるのか。本連載は作間信司著『伝説の経営コンサルタント 一倉定の社長学』(プレジデント社)からの抜粋です。

会社の将来も、社員の幸福も、この1冊に

一倉先生を師と仰ぐ社長数千人のほとんどは、創業社長、オーナー社長だった。大手企業のグループ会社の社長もおられたが、どうしても任期の問題がついて回る。どんなに業績を良くしても、後任の社長が違う路線を取りたがり継続が難しいのが難点である。

 

その点、上場していても同族企業は社長が20年、長ければ30年と経営をするために、経営理念の浸透や社風の強固さが際立っている。私が知っている企業でも、親子三代はごくまれだが、一倉イズムで親子二代30年、40年継続の繁盛企業は全国に本当にたくさんいらっしゃる。

 

経営理念がブレない、会社の運営基本方針が変わらないというのは、幹部にとっても非常に仕事がやりやすく一生を社長とともに歩むことができる。定年が延びる昨今ではあるが40代、50代になって、これまで信じてきた中心軸が変わってしまうのは、社の方針とはいえ気持ちの整理がつかないものである。

 

環境が変わり、事業や扱う商品が変わっていっても問題はない。しかし、社長の経営哲学が変わり、会社が目指すべきものが変わることは別次元なのである。

 

オーナーの生き方、経営理念に代表される基本方針は、全社員の目指すべきものである。毎年の計画書はどうやってお客様を増やし、喜んでいただけるかを、その戦略、戦術は常にお客様の変化に合わせて発表会ごとに変えていくものである。こうした中で、若手社員は先輩を見習い「会社らしさ」を形成していく。

 

社員にとって一番の幸せは一生続けられる仕事があり、自分の職場がなくならないことである。多くの「経営計画」はどうやって業績を伸ばすかが中心であるが、一倉先生の指導は事業継続を第一義に置いて「潰れないための必達目標」から出発し、「手堅い、強い財務」「リスクに強い事業体勢」を目指すものである。

 

大手と違い、中堅・中小企業は、社長の1つの決断ミスが破綻の引き金になりかねない。長期事業構想と短期計画を毎年見直すことで、油断を防ぎ、後手後手にまわりやすい自社革新を弛まず続けていくことができるのである。

 

作間 信司
日本経営合理化協会 専務理事

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一倉定の社長学

一倉定の社長学

作間 信司

プレジデント社

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